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“気付かれてないとでも思ってたん?”と、先生は少し体を乗り出して私に近付いた。
私は頭が真っ白になって、恥ずかしくて。気付かれてたなんて、思ってなかったし。
気付かれていたとしても、顔を覚えていたなんて。
「あんな熱視線向けられて、気付かん方がおかしいやろ」
俺のこと好きなん?と、随分と直球な質問をしてくる先生に、私は顔が熱くなる。
……きっと真っ赤だ、私の顔。こんなの、言わなくても分かるようなものじゃんか。
私の反応に、先生はくすくすと笑って。分かりやすすぎやろ、と私の髪の毛にさらりと触れる。
そう、私の髪の毛に、先生の手が、触れた。
「えっ……な、なんですか……」
「ううん、別に?かわいいなぁって思っただけやで」
さっきより優しい声でそんなことを言った先生に、また顔が熱くなる。
なに、それ。からかってる?子供だからって、遊んでるの?
──そうだとしても、私の心臓の鼓動は止まらないし、今更止められない。
「……先生、好きです」
先生の膝を跨いで、肩に手を置いて。目をまっすぐ見つめて、私は自分の想いを伝えた。
先生との距離はわずか数センチ。その気になれば抱きしめることも、キスすることだって出来る。
まさか、私がこんなことをしてくるなんて思っていなかったのだろう。流石の先生も目を見開いた。
でも、それは一瞬で。先生はさっきまでの笑顔に戻った後、私の顔に手を添えた。
先生の手は冷たくて、思わずびくりと肩を揺らす。そんな私を見て、先生は“やっぱり、子供やん”とにやり。
「……っ、子供だとしても……先生のこと、好き」
「ふぅん……俺に会うために、口紅付けてくるほど俺のこと好きなん?」
「へ?口紅……あっ」
そう言えば口紅を付けていたことを思い出し、私は口元に手をやる。
指先についた赤い色を見つめていると、先生は何故か不機嫌そうな顔に。
乱暴に私の手を取り、口紅が付いている私の指にキスをした。
「な、何して……っ!」
「……校則違反」
え?と先生に聞き返せば、先生はもう一度私の指にキスをして、口を開いた。
「校則違反だから、その口紅……とってあげる」
“どういうことですか”そう私が聞き返す前に、重なった私と先生の唇。
こういうことか、と何故か頭は冷静で。もういいや、と先生の方に重心を傾けた。
──そうして、私達は今の関係になった。
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