２ ページ40
幼馴染みとは、時に面倒臭い。
好きだとか、もう簡単に言えない。
絶対に誰よりも翔を好きなのは私だ！なんて自信だってあるけど、絶対に言えない。
子供の頃から隣同士の家に住んでる相手にそんな事、恥ずかしくて言えない。
「A、早くしなさい！翔くん来てるわよ！」
翔は私の事を好きだと言ってから、毎朝私を迎えに来るようになった。
理由は「お前はこうなると俺を避ける気がするから」らしいんだけど、確かに私は告白を受けた翌日恥ずかし過ぎて学校を休もうとしてた位だった。
「おそよー」
階段を下りると玄関に居た翔が、私に軽く手を挙げる。
「そんな遅くないでしょ？」
「夜更かししてっから起きれねんだろ？」
「ちゃんと起きたし！」
「早くして。早く靴履いて」
「...はい」
私がローファーを履いてる間、翔はスマホに指を走らせてる。
その横顔を盗み見てたら、足がちゃんと靴に入ってなくて躓いた。
「おっと」
「あ...ごめ...」
こけそうになった私の体を、翔の左腕がキャッチしてくれてる。
あれ...こんなに腕太かったっけ...
力も強かったっけ...
「もう大丈夫だから！」
急にドキドキし過ぎてその腕から抜け出すようにすると、彼は「朝からドジってんなよ」と玄関のドアを開けた。
「おばさん、行って来まーす！」
家の奥からお母さんの「いってらっしゃい」が聴こえる。
私達は二人で家を出て、駅までの道を歩き出した。
「良い天気だなー」
両手を挙げて伸びをしながら翔が言う。独り言みたいに。
「なぁ、俺の前髪浮いてね？」
「え？」
「変な寝方したみたいで、寝癖取れないんだって」
覗き込むようにして翔の前髪を見てみる。
言われてみると、ちょっと浮いてる。
「アハッ、浮いてる！」
「Aのせいだ」
「何で！」
「絶対、夜中に寝られなくなるようなコト言われて布団の中で悶えてたからだわ」
「...悶え...」
「あー、変な想像してんじゃないの？」
翔がニヤニヤしながら私を見た。
「はっ！？変なって何！ってゆーか、翔の事なんか全っ然考えないし！」
ホントは頭の中全部が翔で大変な位だけど。
そんな事、絶対に言えない。
「あーあ。今日自分で目玉焼き作ったら目ん玉割れたし、ツイてないわ」
突然翔が溜息混じりにそんな事を言ったから
「完璧な男になんて惹かれない」
と、笑って見せた。
好きだと言えない私の、精一杯だ。
翔は「何だそれ」と、小さく笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3404人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
