●愛を伝えたいだとか【S】 ページ39
幼馴染みとは、時に面倒臭い。
家が隣同士なんて、逃げ場も無い。
しかもその窓の距離、50センチ。
窓を開けて手を伸ばせば、簡単に触れ合う事だって出来る距離だ。
「しょーぉ」
その窓に声を掛ければ、彼はすぐに顔を出す。
「...なに」
眠たそうな目を擦りながら...というか、半分寝てる。目が閉じちゃってる。
「何時だと思ってんの...」
「12時半くらい？もう日付変わっちゃったね」
「分かってんなら何でこんな時間に起こすんだよ...」
「バカなのかなー...」って翔はブツブツ言ってる。
「おやすみって...言いたいなと思って」
私が言うと、翔の目が開いた。
クリン、って私よりよっぽど大きな目。
「は...？」
「おやすみ、翔」
「...え？それだけの為？」
「うん。それだけ」
「お前さぁ...」
翔が自分の髪に突っ込んだ手をクシャクシャと動かした。
「勘弁してよ、そーゆーの...」
「え...？」
怒らせたのかもしれない。
だけど彼の表情は、困ったように笑ってる。
「寝られなくなんじゃん」
「......」
「何か興奮して」
「こっ...！？」
「可愛いことすんじゃねぇ、ばーか」
腕が伸びて来て、私のおでこに翔の拳が当たる。
「はいはい。おやすみ、A」
「うん...」
「早く寝れ」
「...うん」
おでこに引っ付いてた拳がグンっと私を押したから、フラっと後ろに一歩下がってしまう。
その隙に翔は手を振って、自分の部屋の窓を閉めた。
「おやすみ...」
もう誰も居なくなった窓に向かって小さく呟く。
私と翔は単なる幼馴染みだった。
だけどこないだ、翔からずっと私の事が好きだったと告白された。
私達はその瞬間、幼馴染みじゃなくなった。
だけど、だからって、「お付き合いしましょう！」みたいな感じにはならなくて。
だって、ずっと隣に居たし何が変わるの？って感じだし。
なのに、私はこれまでの何年間よりも翔を好きになってしまった。
ベッドに潜り込んで、さっきの翔を思い出す。
「...可愛いって言われた...」
正しくは『可愛いことすんじゃねぇ』だけど。
それは恋する乙女フィルターって事で許される範囲だと思う。
触れてた翔の拳の感触がまだおでこに残ってる。
翔はもう寝たのかな。
またベッドから出てカーテンを開けたけど、翔の部屋の電気は消えてる。
さっき顔を合わせたばっかりなのに。
明日の朝も会えるのに。
ってゆーか、18年も見続けてる顔なのに。
もう、会いたい。
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めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
