２ ページ33
花火大会当日は、少し歩くだけでも汗ばむような暑い日だった。
待ち合わせ時間は夕方。
本当は浴衣を着ようかと思ったけど張り切ってると思われるのも恥ずかしくて、私はノースリーブのワンピースを着た。
日が傾き始めたとは言え湿った空気が纒わり付くような暑さに、浴衣を着なかった私の選択は正しかった！と自分に言い聞かせる。
集合場所にはまだ女子しか居なくて、その中には浴衣を着た子もいる。同性から見てもやっぱり可愛い。
チラホラ集まって来た男子から「女子の浴衣いいな！」って声が聞こえて、ノースリーブから出た自分の腕を見てひとつ溜息。
「おーっす、あちー」
ふらーっと歩いて来た彼に
「あ、ニノー」
「二宮くーん！」
みんなが声をかける。
白いタンクトップと涼しそうな麻のハーフパンツ。
まるで部屋着のまんま出て来たような二宮くんが、キャップのつばを少し上げて私を見た。
「元気ー？五十嵐」
「うん...二宮くんは？」
「絶賛夏バテ！」
そう言った二宮くんはハーフパンツの後ろポケットに突っ込んでたスポドリのペットボトルを出して、グビグビと飲む。
相変わらず色も白くて女の子みたいなのに、その首にクッキリと浮かぶ喉仏。
私の胸が、またチリチリと焼ける。
花火大会の開始時刻まで1時間を切り、私達も打ち上げ場所へと向かった。
もう座って花火を見られるような場所は無いだろうけど、たくさん並んでる屋台で買い食いしたり夜に友達と遊んでるって事自体が正直楽しかったりする。
私も普段は食べない綿飴を友達と買って、写真を撮り合いながら食べた。
二宮くんは男子達と、どこかの屋台で買ったらしい小さな水鉄砲で撃ち合ってる。
「あのカラフルなかき氷も食べたいね！」
「リンゴ飴も可愛くない？」
私達は美味しいとか美味しくないとかよりも、写真映えするかどうかで次に食べる物を決めていた。
浴衣の子達は写真の中でも華やかで、私はまた自分の腕を見て溜息。
浴衣、着てくれば良かったなぁ…そう思った瞬間
「つめたっ！」
丸出しの腕に、水がかかった。
「アハッ！命中ー」
「ちょっと二宮くん、何すんの」
「狙撃」
水鉄砲を構えた二宮くんが私を見て意地悪に笑いながら、またピュッピュッと撃って来る。
「うわっ、私ばっかやめてよ」
「だって浴衣の奴にかけたら、怒られそうじゃん」
笑う彼を見て、浴衣を着てこなくて良かったと思った。
意地悪されるのが嬉しいなんて、おかしいのかもしれないけれど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3404人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めぐお(プロフ) - 久しぶりに読んだイロコイ。やっぱり大好きなお話です。残してくれてありがとうございます。 (2022年9月16日 16時) (
レス) @page47 id: 17cbbe6ec7 (このIDを非表示/違反報告)
莉依(プロフ) - 何度読んでも、やっぱりイロコイのお話は良い。大好き。 (2019年1月8日 0時) (レス) id: c571097cf8 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 結城ちゃんがビール飲めるようになってることに感動です( ；∀；) (2018年8月24日 15時) (レス) id: f393ece0e8 (このIDを非表示/違反報告)
mama(プロフ) - やーっと読むことができました。先生の『行間を読みなさい』が久々に聞けてドキドキしちゃいました。それぞれの恋のはじまりが丁寧に伝わりました。もう、恋をする年齢ではないけれど、お話の中では恋をしていきたいな。レイさん、いつもありがとうございます。 (2018年8月14日 6時) (レス) id: dc084211e8 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - イロコイ…続きが拝読出来て感動♪それと大野さんの「ともちゃんが猫を拾ったあの時、おれは恋を拾った」に心臓がドキューンと殺られたｗｗｗ (2018年8月8日 21時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年5月21日 18時
