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「えっ...?先生の部屋...?」

その日、俺は先生んちの玄関で腰が抜けそうになった。

「うん、お母さんの生徒さんが発表会前で補習ってゆーか...時間外レッスンしたいっていらしてて...」
「そーなんだ...」
「13時までに終わる予定だったんだけど、まだ終わってなくて」

聴こえてくるピアノ曲。
指はどーなってんの?って位に速い。


「多分、後30分くらいで終わると思うから私の部屋で待ってて貰っても良いかな」
「...うん」

こーゆーの、何て言うんだっけ?
願ったり叶ったり?

先生が「どうぞ」って言うから、やっぱりペコペコしながら靴を脱いで今日はリビングじゃなくって先生を追って階段を上がる。


「ちょっと散らかってるけど」

少しだけ照れた感じで、先生が一つのドアを開けた。

「お邪魔しまーす...」

女の子の言う「ちょっと散らかってるけど」って、絶対に嘘だと思うんだ。
だって、全然散らかってない。
俺の言う「ちょっと散らかってるけど」は、本当に散らかってるけど。


「その辺に適当に座ってね」
「その辺...」
「何か飲み物持ってくるね」

そう言うと、先生はすぐに部屋を出てっちゃった。

ってゆーか適当...って、どうしよ...。
座れそうなのは、パソコンデスクの椅子かベッドくらいなんだけど...さすがにベッドはマズいよね...。
とりあえず、床に腰を下ろして先生を待つ。

戻ってきた先生は床に座る俺を見て「何で床!」って笑った。
何か間違っちゃったっぽいけど、笑って貰えたから俺的には大正解だ。

「ベッド座って良いのに」

先生はそう言いながら、俺にオレンジジュースの入ったコップを渡す。
そして、自分はパソコンデスクの椅子に座った。

「床で大丈夫!」

ベッドはだめ、ベッドはだめだめ。

「じゃ、せめて足崩して寛いでね」
「はーい...」

正座してた脚を崩して、胡座を組む。
何となく間が持たなくて、部屋を眺める。

本棚には小説の文庫本と、きっとピアノ曲のスコア。
ぬいぐるみとかは全然無いけど、小さいミッキーマウスのフィギュアが出窓の所に少しだけ並んでる。

「ミッキー好きなの?」
「うん、昔のミッキーが特に好き」
「昔と今って違うの?」
「うん。顔が違うよ」

俺は立ち上がり、出窓の前で並んでるフィギュアを眺めた。
あ、昔のミッキーって目が真っ黒のやつか。白目無いやつ。


「顔の違い、分かった?」

その声に横を見たら、隣に先生が立ってた。

「あっ...うん、目だよね?」

先生が、うんって頷く。

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作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72  
作成日時:2017年12月18日 23時

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