スパイダー【ars M.A】 (ページ11)

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デページ11

「アナタのお名前、聞いても良い？」
「あっ...はい！相葉雅紀です...」

歳下って恋愛対象かなぁ...
大学生から見た高校生なんて、やっぱりガキなのかなぁ...

「雅紀くん」
「へっ！？」
「あ、名前で呼ばれるの嫌だった！？ごめんね、教えてる子達を呼ぶ時に名前呼びだからつい...」
「ううんっ！大丈夫！俺、雅紀くん！」
「アハッ！じゃあ、雅紀くんで」

うーわ...どうする？
もう別に歳下とか歳上とか、どーでも良くなってきた。
どーでも良くは無いんだけど、どーでも良い。

「俺は、先生って呼んだら良い？」
「えっ？あー...うん、そうだね！一応、先生だから」
「うん、分かった」

本当は『Aちゃん』って呼びたいけど。
でも歳上だし、ちゃん付けはちょっと気が引ける。
だけど『先生』って、何か良い。
何が良いのかは、内緒。

「あ、コーヒー飲んでね？」

勧められて、さっき飲もうとしてやめたコーヒーを飲む。
ちょっと苦い。
缶コーヒーの甘いヤツとは違う。

「雅紀くんは、どうしてピアノ弾きたいの？」

突然訊かれて、コーヒー吹き出しそうになった。
だって、それは、アナタと近付きたかったから...なんて言えないし...

「あの...あっ、幼馴染がね、ピアノ弾いてて」
「あぁ！お母様がピアノ教室してるって言ってた？」
「うん、その幼馴染がピアノ弾いてるの格好良くて」
「格好良いって事は、男の子？」

俺が頷くと、「鍵盤男子って格好良いもんね」と今度は彼女が頷いてる。

「あ...そう言えば、先生がさっき弾いてた曲。その幼馴染がよく弾いてるの」
「さっき？あ、雅紀くんが来る前に弾いてた曲？」
「うん」
「あれは、ノクターンの第2番」
「ノクターン...」
「これもショパンだよ、『別れの曲』と同じ」

彼女が、さっきの曲を鼻唄で奏でた。

「先生はショパンさんが好きなの？」
「うん、好き」

アナタが好きだって言うのなら、俺もショパンを好きになりそう。
他にどんな曲があるのかもよく分かんないけど、きっと俺は帰ったらショパンを検索するんだろうなって思う。

・

「カズくん！」
「ノックしろや！！」
「ショパン教えて！！」
「はぁ！？」

ベッドで漫画を読んでたカズ君は、部屋に飛び込んで来た俺を見て眉間に皺を寄せた。

「俺！ピアノ教えて貰える！」
「はー...そりゃ良かったね」

また漫画を読み始めたカズ君の隣に寝転んで「ショパン！どんな人？」って訊くと「音楽家」って俺でも分かる答えを返された。