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まさにガラスの靴を拾った、今ならそう思う
俺と彼女の出逢いは、まるでシンデレラの一場面のようだった
(………?靴……?)
とある雨の日の帰り道、人気のない道にポツンとそれは置かれていた
置かれていた、そう言うよりは“捨てられていた”の表現の方が正しいかもしれない
流石に拾うことに躊躇して、とりあえず立ち止まってみる
しとしとと止まらない雨の中、靴の前で立ち止まっている俺はどういう風に見えるのだろうか
どうしたもんかな、もう放っておこうかな、そう思い足を動かそうとしたその時だった
「あ…………」
そんな呟きが雨の音に混じって聞こえてきた
前を見ると、こんな雨の中で傘もささずにずぶ濡れの女の子
制服を着ているあたり、高校生くらいだろうか
そして、足元を見ると……片足裸足だった
持ち主か、そう思いながら何となく靴から離れると、その少女はにこりと優しく微笑んだ
「すいません、ビックリしましたよね……色々あって脱げちゃって」
「え、………あー……大丈夫、面白かったから」
謎のフォローを入れた俺に、少女は少し目を見開いた後にまた少し口角を上げた
(…………可愛いな、この子)
きっと学校ではモテるんだろうな、と勝手な推測をしながら靴を履く少女を見つめる
濡れているせいで少し重たく見える髪も、彼女の魅力を消すことなく、むしろ増長させていた
少し憂鬱そうな表情も、捲った袖からチラリと見える青黒い痣も……
─────痣?
「………その痣、どうしたの?」
気付けば、そんな疑問が口から出ていた
しまった、いきなり過ぎたと後悔してももう遅い
少女は一瞬顔を歪めた後、またにこりと笑って口を開いた
「…………転けたんです、血は出なかったんですけどね」
“転けたって、そんな所に痣なんて出来るの?”更にそう聞きそうになって、口元を抑えた
痣は二の腕辺りにあって、あきらかに不自然だけど……彼女の雰囲気、表情に、聞いてはいけないような気がして
「………そうなんだ、もう遅いから気を付けなよ?傘、あげる」
俺の家すぐそこだから、遠慮せずに使ってよ、と彼女に傘を押し付けながら自分の家を指さす
もうびしょ濡れだから遅い気もするけど、一応
彼女は申し訳なさそうな顔をした後、渋々受けとってくれた
これが俺と彼女が出逢った日
この時はまさか、あんな事が起こるなんて思っていなかった
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通りすがりの乙姫様 - 完結お疲れ様でした!めちゃ感動しちゃいました…!!他の作品も頑張って下さいね!! (2017年12月31日 20時) (レス) id: 3bd615decd (このIDを非表示/違反報告)
(仮)そうけんびちゃ - お疲れ様でした!夢主ちゃんと俺の性格と似つかなくて何かおぉう、、、天使ぃみたいな感じでしたw自分やとあア?つって殴ってましたw (2017年12月24日 10時) (レス) id: 3ca494f799 (このIDを非表示/違反報告)
Mai - 綺麗なお話ですね…!このお話なら長編でも根気よく読めそうです(笑)お伽噺シリーズ、楽しみにしています!(少しだけ、最後に裏切った(?)人に腹が立ちまs(( ) (2017年11月15日 19時) (レス) id: c608e0f4fb (このIDを非表示/違反報告)
世界崩壊轟(プロフ) - なんだこのすごい感動する話。 (2017年11月11日 15時) (レス) id: c47e759a56 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - なんか…もう言葉が出ません…最高か…シリーズ化楽しみにしてます…(萌死) (2017年11月6日 21時) (レス) id: df5db280b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きゃろっと。 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月3日 15時