しにたがり【地縛少年花子くん】 (ページ13)

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13話ページ13

翌朝、光と約束した通りお弁当を作っていた。光は日直の仕事があるので先に行った。姫とお父さんはそのうち起きるだろうし、朝ごはんだけ作ってラップをしておいた。

「A〜…」

「あ、お兄ちゃん！やっと起きた！今日は生徒会ないの？」

「朝はね…」

「ふーん、そっかそっか！それじゃ、これお弁当！光の分もあるから届けてね？」

ふたつの大きい弁当箱を押し付け、部屋に戻り制服に着替える。鏡に写る自分の姿にため息が出る。別に怪我があるのはいい。けれど、この傷のせいで最近は姫と一緒に風呂に入れていない。
そのうえ、昨日はこの傷を見られるところだった。首の傷は髪の毛で隠した。

「お兄ちゃーん、私先に行ってるからね〜！」

未だにもそもそと白米を咀嚼している兄さんに声をかけ、家を飛び出した。
家からある程度離れたところで1度立ちどまり、大きく息を吐き出す。

「はあ…疲れた」

いつもはあまり動かさない表情筋をフル稼働したせいで頬がヒクヒクしている。

教室に入ると、いつもとあびせられる視線が違った。
昨日の女子は怯えたような、気まずそうな表情で、他の女子は蔑むような視線ではなくただ珍しい物を見るような目を向けるだけだった。
男子は相変わらずだし、調子が狂う。

視線を気にすれば気にするほど、首の傷が痒くなる気がして、気にしないことにした。
ふと教室の隅に目を向けると、白杖代と呼ばれた杖代がふよふよと浮いていて、思わずため息をついた。

万が一の時に駆けつけられるようにしてるんだけど、正直ありがた迷惑だし彼は怪異だから役に立たない気がする。

今日のクラスの様子からして大丈夫そうだけど…。
授業が始まると、急に面倒になって体調不良だと告げ屋上に向かった。授業中であるため、誰一人いなくて落ち着く。

ちょうど良い高さに盛り上がった台のようなところに寝そべり、空を眺めながらもっけを撫でていた。

「A？」

「…花子さん。」

私の瞳に逆さまにうつった彼の名前を呼ぶと、くふふ、と笑みを浮かべた。
光は遮られているのに影がない。

「あは、サボりは感心しないなあ」

「別に関係ないでしょ。」

1人で安らげる場所に来たのに、彼がいるのでは意味が無い。もっけを膝の上から解放し、その場を後にしようと起き上がった。しかし勢いよく手を引かれ、彼の腕の中へ一直線。

「俺は君を殺すよ。
虐められてばかり、悲しんでるだけの君を」