Laundry【ars K.N】 (ページ29)

今日:7 hit、昨日:54 hit、合計:2,217,061 hit

『in CAR』ページ29

※時間軸は本編19話20話の間辺り

「こーいーしちゃったんだー♪たぶんー♪」

普段は口笛派のオレも、無意識に鼻唄歌っちゃう位に浮かれてる。
車の後部座席に沈むように座って、クフフと溢れてくる笑いとともにに「きづぅいてなーいでっしょー♪」と歌う。

「気付いてるけど？」

運転席から、シラーッとした声。

「うっせぇ！J！給料出さねぇぞ！」
「うわー...何この暴君社長。ここで下ろすよ？」

本当に車を路肩に寄せた運転手のJの肩にポン、と手を乗せた助手席に座る秘書の翔ちゃんが

「勘弁してやってくれないか。うちの社長は少々、子供っぽい所がある」

サラッとオレをディスるから

「おいこら。それ、悪口じゃね？」

バックミラー越しに凄んでみる。

「悪口？とんでもございません。その少年の心をお持ちのままでいらっしゃるから柔軟な発想でゲームをお作りになられるんですから」
「あらそう？」
「そうでございますよ」

オレの優秀な秘書が、ニッコリ笑った。

「ところで社長、まだ洗濯機は買われないのですか？」
「んー...いらなくね？家電の中で一番いらなくね？」

「いるだろ、一番いるだろ」ってJが言う。

今のマンションに引っ越した時に、家具も家電も全部家に合わせて買い換えた。
必要な物をリストアップしてると、洗濯機っているか？って思って、一度そう思うと本当に不必要に感じて来て買うのを見合わせた。
だって、近所にコインランドリーあるし。

オレは、放っておくと会社と家の往復しかしない毎日だとゆー自覚もあったし、それはさすがに外界との関わり合いに乏しくなってしまうとゆー危機感もあった。

そこに週二回のコインランドリー通いは、うってつけだったんだ。
行き帰り、商店街を通るからそこのおっちゃんおばちゃん達と話したり。
土曜の公園を通るから遊んでる小学生にゲームのリサーチしてみたり。

コインランドリー通いを気に入ってたオレが、あの子と会ったのはもうどれ位前だろう。

ため息ばっかり吐いて、なのに何か纏ってる雰囲気は妙に明るい。
受け答えが、何か変。

オレの事『口笛兄さん』とか呼んでるし。
ネーミングセンス、どーなってんの。

だけど、オレはだんだんとあの子に会うのが楽しみになって

あの子に会う為にランドリーに走っちゃう程になった。

「洗濯機いらなーい。愛しのあの子に会えなくなるもーん」
「ランドリーに運命の出逢いがあるだなんて...ロマンティックですね」

翔ちゃんが微笑んだ。