Laundry【ars K.N】 (ページ15)

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コページ15

「好きな人...って...」
「......」
「もう、他の奴と付き合ってんの...？」

あからさまに、元カレは不愉快そうな顔をした。

ってゆーか『もう』って言うけど、私達が分かれたのって何ヶ月も前なんだけど。

「...付き合っては無いけど」
「じゃあ...」
「でも好きな人が居るのに、他の人とは付き合えないよ」
「...俺のこと、全然好きじゃ無いの？」

ズキン、と心が痛んだ。

今更こんな表情を見せるなんて、ズルい。
でも女がいつまでも自分の事を好きだなんて思ってたら大間違いなんだから。

「...ごめん」
「......」
「さよなら」

もう元カレの顔は見ないようにして、私は彼の横を通り過ぎて部屋に入った。

ドアを閉めると、大きな溜息が出た。

どんな理由であれ、あんな顔を見せられるのは辛い。

もう一度出た溜息に、更に溜息が出た。

・

約束をしてる訳では無い。

だけど、会えるかな...って期待してしまう水曜日の夜。

洗濯物を洗濯機に入れて、パイプ椅子に座ってジーっと入口を見詰める。

足音がする度にドキっとするけど、それがカズじゃないのは分かる。

だって、カズは

「あ...来た...」

いつだって、綺麗な口笛を吹きながらやって来るから。

私は慌てて入り口から目を離して、持ってた雑誌をずーっと読んでたような姿勢を作る。

「お。お疲れ、A」
「あー！カズ、お疲れー！」

今気付きましたって顔をして、ランドリーに入って来たカズに手を挙げて挨拶。

「ん、これやるよ」
「え？」
「さっき自販機でブラック買おうと思って間違ったのよ、カフェオレ」

私の前にカフェオレの缶をコツン、と置いて

カズは洗濯機に向かう。

目の前の缶に、ソっと触れる。

自分でもビックリするくらいに嬉しくて、もうこのまま飲まずに持って帰りたいって思ってしまう。

「あれ？カフェオレ嫌い？」
「えっ！？」

隣にドカっと座ったカズがブラックコーヒーの缶を開けながら、私に訊いた。

「飲んでないから嫌いなのかと思って」
「あ...ううん！好き好き！ありがと」

持って帰って保存したかったよー！と思いながら、プルタブを開ける。

そう言えば、元カレはカフェオレが好きな人だった。

「...ハァ...」

漏れてしまった溜息に、カズが「また溜息」って笑った。

「あ...ごめん...」
「最近減ってたのにね、Aの溜息」
「え...」
「何か嫌なコトでもあった？」

私を横目で見ながら、彼は缶に口を付けた。