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「どう？翔さんの会社は」
あの頃より丸い雰囲気になった潤くんが、カウンターの中から訊いてくる。
「うん、居心地いいよ。オレ、アイドル扱いされてるし」
「また本性隠して人を誑し込んでんの？」
「人聞き悪いなー！世渡り上手だと言ってよ」
タハーと笑って、カウンターに突っ伏す。
「もう、オレの仕事で誰かを泣かせたくなかったから...」
仕事は好きだったけど
キミの事で、色々と反省したにも関わらずオレは徐々に人の気持ちに鈍くなって行ってて
そしてあの、奥様事件が起きた。
あぁ...キミが『もう潮時じゃない？』って言ってんじゃないかな...？なんて思った。
あ、こんな言い方したら天国行っちゃった人みたいだけど。
「...ねぇ、アイツって生きてるよね？」
「アイツって？」
「オレが最低だった時の、最高な彼女」
「あぁ！生きてるに決まってんだろ。結婚もして子供も居るし、幸せでしょ」
「アハッ、だよね」
キミが結婚したと大学の頃の友達から聞いたのは、五年くらい前だっけ。
『おめでとう』半分、『悔しい』半分だった。
「何？まだ忘れらんないの？」
「んな訳無いでしょ。何年前の事だと思ってんの」
「十年前」
「...十年...もうそんな経つんだ」
キミは今、どこにいるのかな。
笑って暮らしてるのかな。
あの笑顔で家族を幸せにしてるのかな。
「未練とかは無いけど、今ならもっと大切にしてあげられたんだろうなぁ...とは思うね」
「それは俺だって、昔の彼女には思うよ？」
「ガキに恋愛なんて無理だよね！」
「20歳そこそこの頃なんて、自分の事だってよく分かんないのにね」
オレはオトナになったよ。
それなりに幸せだよ。
あの頃は言えなかったけど
ありがとう。
「二宮さーん！これ、美味しいよ！食べるー？」
「うるせぇなぁ、でも子！」
フロアの方から唐揚げ持って走って来た相葉さんの彼女にチョップする。
「おいこら！俺の子に何やってんの！富士山の火口に突き落とすよ？」
過保護な彼氏に今度はオレがチョップされる。
何かよく分かんないけど、今のオレは結構良い感じの毎日を送ってるよ。
またいつか...
その時は
お互いの幸福自慢でも、出来たら良いね。
・・・・・『エル』END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年1月5日 22時
