Clear-Crane-Crime 9th【arsM.A】 (ページ19)

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299.口説き落とす。ページ19

「だって智さんは、スケジュール管理とか出来ないです！ダブルブッキングどころか、トリプルだってしかねない...」

何ならアポとってる打ち合わせだって、行くの忘れるかもしれない...。
クライアントに持って来いと言われてた資料だって、忘れて行ってしまうかもしれない...。
ってゆーか、仕事に集中してる時はデザインの事以外は何も考えなくなっちゃう人なのに！

「智さん...大丈夫でしょうか...」
「アハッ。優しいな、Aは」
「...優しくなんか、ありません」

何か最近こんなやり取りばっかりしてる気がする。
本物の優しい人に対して、申し訳無くなる。

「大丈夫だよ。心配しなくても、ちゃんと後任は居る」
「そうなんですか！？」
「俺の秘書に...って思ってすげぇ口説いた奴なんだけど。ソイツに智くんの秘書を任せようと思って」

良かった...。
...あ、ちょっと待って...口説いた...？

「櫻井さん、一つお伺いしたいんですが...」
「ん？」
「女性...ですか？」
「バカにすんなよ？智くんに女性秘書つけたらダメな事くらい学習したわ。おとこ！」

ケラケラ笑う櫻井さんに「すみません」って、私も笑って謝る。

「だけど、口説く程...って事は優秀な方なんですよね？その方じゃなくて、本当に私なんかで良いんでしょうか...」
「良くないんだったら、こんな提案はしないよ。俺、無駄な事はしないから」
「......」
「Aさえ良いなら、お願いしたいんだけど。どうだろう」
「...有難く引き受けさせて頂きます！」

櫻井さんが、その辺の女子達をなぎ倒しそうな笑顔を見せた。
...何でこれで彼女が居ないんだ...。

「あ、それで智さんの秘書になられる方はいつから来られるんですか？」
「今日。もうすぐ来るはず」
「そうなんですね！だったら引き継ぎしておきますね」
「よろしく」
「どんな方なんですか？櫻井さんが口説くお相手、気になります」
「んー、可愛いんじゃない？」
「可愛い...？」

男性だって言ってなかったっけ...？
やっぱり櫻井さんって...

「おい、俺は三度の飯より女の子が好きだからな？」
「何も言ってないじゃないですかー！」
「顔が言ってたわ！」

櫻井さんが笑う。

「可愛いってのは、愛嬌があるって事な。人当たりが良いの」
「あぁ、なるほど」
「人の懐に入るのが上手い。その場に彼が居ると物事が上手く行く雰囲気がある」
「へぇ...凄いですね！」

どんな人なんだろう！と思ってると、また内線が鳴った。