Clear‐Crane‐Crime 8th【ars M.A】 (ページ11)

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256.横並び。ページ11

雅紀くんは、はにかむように微笑んで

そのまま目を閉じ、暫くすると呼吸が寝息に変わった。

「...寝ちゃった」

整髪料が付いてない、サラサラの髪を撫でる。
いつもだったらちょっと迷惑そうな表情になるのに、ずっと撫でてても穏やかな顔。

「フフッ、熟睡」

昨日、あの人は雅紀くんに会いに来たのか。
会いに来たとしたら何の用があったのか。

そんな事を考え出したらキリが無い。
だけど二宮さんは『相葉さんの事、信じらんないの？』って言った。

それに、雅紀くんがちゃんと『信じてて』って言ってくれたんだから。

「大丈夫、大丈夫」

呟いて、熟睡してる雅紀くんにギュウっと抱き着いた。
力いっぱい、ギュウって。

「んんー...」

ちょっと不機嫌そうな声を出した雅紀くんに、いつもと同じ空気を感じた。

私はベッドを出て、キッチンに立つ。
もう、何度もこのキッチンも使わせて貰ってる。
調味料の場所も、食器の位置も、全部覚えた。

冷蔵庫を覗いて何が作れそうか考える。

卵とハムと玉ねぎ。
それから、冷凍ご飯。

冷凍ご飯をレンジに入れて、卵をボールに割り入れて菜箸で混ぜてると

「寝てた...」

雅紀くんが、ガバっと後ろから覆い被さって来た。

「フフッ、寝てたね」
「...ごめん」
「ううん、寝てたって言っても一時間くらいじゃない？」
「お昼ご飯？」
「うん」

ピーピーとレンジが鳴る。

「あ、冷凍ご飯があったまったって」
「うん」
「うんじゃなくって、離れてくれなきゃレンジから出せない！」

わざと叱るように言うと、雅紀くんが「俺が出すよ」って笑いながら私から離れてレンジの中からご飯を出してくれた。

「何作ってくれるの？」
「何だと思う？」
「んー...チャーハン」
「正解」

フライパンを振ってる私の隣で、カウンターに両手をついて立ってる。

「あ、そう言えばAちゃんのお母さんのチャーハンまだ食べさせて貰ってないね」
「あー、アハッ。何かそんな話もあったね」
「今度、Aちゃんち行っても良い？」
「お母さんのチャーハン食べに？」

雅紀くんは電子ポットでお湯を沸かせて、即席スープを作ってる。わかめスープ。

向かい合ってチャーハンとわかめスープでお昼ご飯。

「ドライブ行こっか」

雅紀くんの提案で、私達は車に乗り込む。

車内に流れる曲に合わせて雅紀くんが鼻唄を歌う。
ちょっとハスキーな歌声。音程はピッタリ。

夕方の街を走る車の中は、オレンジ色に染まる。