Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ7)

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217.割増。ページ7

四人で話しながら、暫くすると二宮さんが飲み終わったジョッキをコトンと置いた。

「じゃあオレ、帰ろっかなー」
「え？せっかく浴衣着て来たのに、もう？」

思わず訊いてしまう。
だって、洋服に比べたら浴衣着るのってそんなにラクでは無いはずだし...。

「タダ酒が飲めるなら浴衣着るくらいお安い御用でしょ」

ンフッて笑った二宮さんに向かって「ニノ、お前！酒どころか、タダ飯何度食わせてやってると思ってんだよ！」って潤さんが呆れたように言った。

「だってー、潤子が食べに来てぇって泣くからさぁ」
「和美が俺に会いたいんでしょ？素直になんなよ」

また始まった。
潤子と和美。

「アハハッ、バカだー」

ほろ酔いの雅紀くんが二人を指差してヘラっと笑う。
可愛い。萌え死ぬ。

「ホントは浴衣着てたのよ、元々」
「え？」

二宮さんが私に言った。

「今日、花火だったろ？それ行ってたから、お客さんと」
「お客さんと？」
「うん。新しい浴衣を新調するから、一緒に花火行かない？って誘われて」

「お陰様でたっかい浴衣売れたよー」って、二宮さんは大して嬉しくも無さそうに口元だけで笑う。

「お前らも行ってたんじゃないの？花火」

そのまま彼は私と雅紀くんを見た。

「あー...私は会社の方で集まりがあって...」
「俺は最後だけそこから見た」

二宮さんが、ん？って顔をしてすぐに「あー、でも子は翔ちゃんちだったのね」って納得したと思ったら「彼氏以外の男に浴衣姿なんて見せちゃって」って目をほそーくしてる。
何か腹の立つ顔だなぁ。

「彼氏以外って言っても、単なる仕事仲間ですからね？」
「ほぉ。彼氏的にはいかがですか？」

立ち上がり雅紀くんの隣まで来てマイクを持ってるようなジェスチャーをした二宮さんが、そのエアマイクを雅紀くんの口元に向ける。

「俺？んー...」

雅紀くんがチラっと私を見た。

「いくら仕事仲間でも、俺の子をあんまりジロジロ見るんじゃねぇぞ？って思うかな」

「お。嫉妬」って、ムフっとなってる二宮さんが

「ま、女の子の浴衣姿は普段の5割増しって言うからねぇ」

私に向かって言う。

「えっ？そうなんですか？」
「オレの自論」
「自論...」
「そして、オレは浴衣を着ると8割増しでイイオトコ」
「それも自論？」
「ううん、これはオレの周りに居る女子達の意見」

黒い髪を耳に掛けて微笑む二宮さんは、確かに8割増しかもしれないけど

雅紀くんだって10割増しですから！