Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ28)

今日:6 hit、昨日:30 hit、合計:1,745,148 hit

238.冗談。ページ28

「Aちゃんには衛生士さんの仮装、させれば良かった」

離れた唇が、そう呟く。

「ねぇ、偶然？」

訊かれて、一瞬意味が分からなかったけど

「まさか、示し合わせた？」

その言葉で、智さんと被ってしまった仮装の事だと気付いた。

「...偶然だよ...」
「フフッ。偶然じゃなかったら、許さないけどね？」

冗談なのかどうなのか、分からない表情で雅紀くんが笑う。

「さすがに潤くんの店ではなぁ...」

そんな事を言いながら、彼は服の中を掌で撫でる。

「これ以上は無理か」

なんて言ってるくせに、今度はタイトスカートの裾をツツーッと持ち上げるからその手をパチンと叩く。

「アハッ、ごめんね？」
「もう...」
「ちょっと興奮しちゃって」

外でもよく見せてる可愛らしい笑顔で、乱れた私の服を整えてくれる。
だから、私も雅紀くんのスクラブの裾をキュッと引っ張って整えてあげた。

「本当は注射したいんだけど」
「バッ...バカな事を！」
「何が？『注射』のどこがバカ？」

ククッと笑った彼の胸をパチン！と叩くと、キュッと抱き締められる。

「...もうちょっとだけ...」

さっきまで、少し怖い位だったのに

今度は凄く優しくて、何だか泣きそう。

「ハァ...一緒に帰りたい...」
「ダメだよ、雅紀くんは居なきゃ」

ミヤビナイトの時、雅紀くんは立場上やっぱり閉店まで居なきゃいけない。
真夜中の方がお客さん多かったりするらしくて、DJブースに立つのも1回だけじゃないから。
だから、彼はそーゆー時潤さんの家に泊まってる。

だけどそれだと当然終電が無くなるから、私は帰らなきゃダメで。

「明日、うち来る？」
「うん」
「じゃあ、続きは明日」
「.....」
「フフッ。Aちゃんだって、そのつもりでしょ？」

意地悪な表情で、私の顔を覗き込む。
何も言わずにいたら、唇をぺろりと舐められた。

「そろそろ行かなきゃ、怪しまれるね」と、雅紀くんが私から離れる。

そして、ソローっと個室のドアを開けて「OK！」って私と一緒に出る。
男子トイレのドアも雅紀くんが開けて顔だけ出してキョロキョロ。

「よし！今なら誰も居ないから、先にAちゃん出て！」

ポンッと背中を押され通路に出て、何事も無かったようにカウンターで潤さんからおしぼりを貰いフロアを歩く。

心臓がまだ、早打ちしていて少し苦しい。
...少しじゃない、かなり苦しい。倒れそう。

ベースに戻るとそこでは、3人が真剣にジェンガをしていた。