Clear‐Crane‐Crime 7th【ars M.A】 (ページ15)

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225.SUMMER END。ページ15

朝ご飯は、浴衣で食べに行けないねって事で雅紀くんがルームサービスを頼んでくれてた。

パジャマでスッピンのまんま、朝食が綺麗に並べられてるのを眺める。
ローブ肌蹴っ放しだった雅紀くんも、さすがにパジャマを着てる。

頭のてっぺんの髪をピョコンって立てて、目を擦ってる。

「このジャム、美味しい」
「雅紀くんって、ミルクジャム好きだね」
「うん、好き。あ、スープも美味しい」
「あー、ホントだ」
「サラダー」

美味しそうにサラダ食べてる。
何か、小動物みたい。
ほわほわしてる。

きっと、ON状態の雅紀くんに比べたらかなり脱力系な彼だけどそれが可愛くて、本当は窓を全開にして「どうだ！私の彼氏、すっげぇ可愛いだろう！？」と叫びたい気分。

食事を終えて、もうずーっとここに居たいねぇ...とか言いながら帰る準備を始める。

メイクして、浴衣着て、髪を整えて。

「お待たせしました」

私が全部用意をし終わって洗面所から出ると、雅紀くんは浴衣を着て寝癖の無くなった髪で昨日も座ってた窓辺の椅子に座ってた。

その指先は、小さな折鶴を折ってる。

傍らにあるテーブルの上には三羽の折鶴が並んでて、よく見るとその鶴にはホテルのロゴが入ってた。
多分、ベッドサイドに置いてあったメモ帳だ。

「ねぇ、私これ持って帰っても良い？」
「えー？こんなのいる？」
「うん、記念になるもん」

そうなの？って笑った雅紀くんが「じゃあ、これは...」って今折ったばかりの鶴にペンで何か書いて、それをベッドの上に置いた。

何だろう？と思って見てみると鶴の羽根に『ありがとうございました』って書いてある。

「さぁてと！もう行けそう？」

雅紀くんが、荷物を持って私を見た。

「雅紀くん」
「ん？」
「きっと、喜んで貰えるよ。絶対に嬉しい！」

ベッドの上の鶴を指差してそう言うと、彼は困ったような笑顔を見せる。

出逢った頃は自分の手で潰してしまってた鶴をこんな風に使った雅紀くんに、何故か私が嬉しくなって。

何だったら、ちょっと泣きそうだった。

チェックアウトして、浴衣で駅までの道を歩いてると

「朝から浴衣着てる人なんて居ないよねぇ」

雅紀くんが呟いて。

「確かにそうだね」
「朝帰り、バレバレじゃない？」
「あー...」
「アハッ」

笑った彼を見て、私も笑った。

夏が終わる。

空の色が変わる。

雲の形が変わる。

風の匂いが変わる。

季節が変わる。

色が、変わる。