4-7.周期の訪れ ページ7
戸惑う私に、如月さんは一言、
「シュートを打つ時に力みすぎ。練習なのに何を緊張する必要があるの？」
と言い放った。
そしてこちらにボールを投げて寄越し、私にシュートを打つよう促した。
言われるがままに何本もシュートを打つ。「慣れることが大事よ」という如月さんの言葉に何とか頷きながら脚を動かした。
.
汗が地面に滴り落ちている。
空が半分夜に侵食された頃、如月さんは「今日はここまで」と膝をついている私に手を差し伸べた。
「すみません。ありがとう、ございます……」
如月さんの指導は、コーチをやっていると言うだけあってとてもわかりやすいものだった。
しかし彼女が何故私に指導してくれたのかわからない。その理由を聞こうと思ったところで彼女は「またね」と手を振って行ってしまった。
「……なんだったんだろう…………」
とにかく、完全に暗くなる前に私も帰らなければ。ボールを抱え、私は家路を急いだ。
シュート練のおかげか、その日は布団に入ってすぐに眠ることができた。
.
次の日、部活が終わってから河川敷に行くと、すでに如月さんが来ており一人でボールを蹴っていた。
如月さんは足元にあったボールを高く蹴り上げる。それはミスキックというわけではなく、明らかに何かの目的を持って蹴られていた。
ボールを追いかけて如月さんが真っ直ぐに飛び上がった。まだ夕暮れに包まれていたはずのグラウンドに、彼女とボールの周りだけ滲んだように夜が＿＿いや、宇宙があった。
如月さんは力強くシュートを打つ。それは淡く水色に光ながら尾を引いて、ゴールに向かって流れていった。
流星とは少し違う。
着地した如月さんの周りに光の塵が降りていた。
＿＿彗星だ。
呆気にとられていると、私が来ていることに気付いていたのか、如月さんがこちらを振り返ってニッと笑った。
慌てて階段を駆け下りる。
「こっ、こんばんは！」
「こんばんは」
「あ、あの、今のって……必殺技、ですよね……！？」
「そうよ、あたしの『すいせいシュート』」
すいせいシュート、と口の中で繰り返す。
まばゆい光を纏ったボールが空を切り裂いていた。
転校前の学校でも、雷門サッカー部に入ってからも色々な必殺技を見てきたが、あんなに綺麗な必殺シュートは見たことがなかった。
そしてその技を見た時、私は思った。
＿＿私もこの技が使えたら、と。
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春間(プロフ) - 桜星。さん» コメントありがとうございます！ 助かります……！ (2021年2月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
桜星。 - 4-3「怯え」の三行目、天馬のセリフが「次の試合こと」になっていますが、恐らく「次の試合のこと」ではないでしょうか。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 15148237ac (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - なすびさん» ありがとうございます！ 楽しみにしてくださってとても嬉しいです。頑張ります！！ (2020年8月26日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
なすび(プロフ) - 続編おめでとうございます！剣城くん抜きで試合がどうなるか楽しみです！ (2020年8月26日 16時) (レス) id: c22c2e84dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春真 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月26日 12時
