青天の霹靂４【イナGO】

4-5.問答 ページ5

「Aちゃん、お疲れさま」
「ありがとう……」

　葵ちゃんからタオルを受け取る。と言っても気持ちのいい汗などかいていない。

「やっぱり、シュートは難しい？」
「うん……」

　うまくシュートが撃てないことにはかなり焦りを感じていたが、それ以上に周りからの視線が気になって仕方なかった。


　＿＿なんであんな下手な奴がスタメンなんだ。

　＿＿他にもＦＷの選手がいるのに。

　＿＿次の試合は絶望的だな。


　直接言われたわけではない。しかし迷惑そうな、呆れた視線が向けられているのが怖くて、そう言われているような感覚がずっと続いている。



　私が一番わかっているのだ。



　私がこの調子では、次の試合に勝てないということぐらい。



　耐えられなかった。
　たまらなくなって、私は円堂監督に言った。

「次の、試合のスタメンを、変えていただけませんか」

　円堂監督は何も言わずにこちらをじっと見ている。


「私よりももっと、上手い子はいます。どうして私なんですか……？」
「自分にはできないと思うのか」

　頷くのが嫌だった。
　しかしそれが事実だった。


「…………はい……」



　グラウンドに沈黙が広がった。みんなが押し黙って私と円堂監督のやりとりの行く末を見ていた。


「俺はお前ならできると思ってる」
「それは…………買い被りすぎです……」
「そんなことはない」
「いえ……」

　もうその場にいるのが苦痛だった。周りの珍しいものを見る視線も、円堂監督の真っ黒な瞳も、しどろもどろに受け答えする自分にも嫌悪感を抱いていた。
　泣きそうなのと同時に吐きそうだった。脚に力が入りすぎてガクガクと震えていた。


「……す、みません、失礼します」

　話の途中だが、尻すぼみにそう言ってその場をあとにした。
　葵ちゃんが私を呼んだ気がしたが、振り返ることすらできなかった。







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