4-25.本音 ページ25
ホーリーライナーを降りて、キャラバンに乗り込む。
窓際の席にいる剣城くんに隣に座ってもいいか尋ねると、短く了承の声が返ってきた。
.
「いいシュートだった」
キャラバンが走り出したところで剣城くんはぽつりと言った。目を向けると、彼は穏やかに目元を緩ませていた。半分ほど沈んだ太陽がその表情を窓越しに照らしている。
感情のコントロールが、突然できなくなってしまったのだろうか。微笑む彼を見ていたら、ぴんと張り詰めていた心がふいに綻んだ。
試合では先輩や後輩といった仲間たちと一緒に戦っていて、決して孤独ではなかった。
それでも私は、エースストライカーがいないという事実に、ずっと不安を感じていた。決して剣城くん以外のメンバーが頼りないというわけではなくて、ただ剣城くんに精神的に支えられていた部分が大きかったのだ。
フィールドのどこを探しても見つからない１０番。
端的に表すと、心細かった。
彼がいないというだけで、フィールドはこんなにも怖い場所になるのかと、愕然としていた。そのことに、今やっと気付いた。
ふいに名前を呼びたくなって彼の名前を呼ぶと、彼は「ん？」と存外柔らかく返事をする。
「次の試合は、出られそう？」
「ああ。もうすぐ練習にも参加していいと言われている」
休んでいた分を取り返すつもりなのだろう。彼の表情はやる気に満ちていた。
それを見ていると安心した。隙間風の吹いていた心がぎゅっと満たされて、身体がぽかぽかと暖まるようだった。
.
.
４.『駆ける氷塵星』(了)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春間(プロフ) - 桜星。さん» コメントありがとうございます！ 助かります……！ (2021年2月25日 14時) (
レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
桜星。 - 4-3「怯え」の三行目、天馬のセリフが「次の試合こと」になっていますが、恐らく「次の試合のこと」ではないでしょうか。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 15148237ac (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - なすびさん» ありがとうございます！ 楽しみにしてくださってとても嬉しいです。頑張ります！！ (2020年8月26日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
なすび(プロフ) - 続編おめでとうございます！剣城くん抜きで試合がどうなるか楽しみです！ (2020年8月26日 16時) (レス) id: c22c2e84dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春真 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時：2020年8月26日 12時
