4-22.千夜一夜の軌跡 ページ22
「葵ちゃん……」
申し訳なさでいっぱいだった。応援してくれている人がいて、何とかしたいと自分でも思っているのに、気持ちだけではどうにもならない。
ぐっと手元の砂を掴む。
「そうだよA、まだこれからだよ!」
いつの間にか天馬くんが目の前にいて、私の腕を引っ張って立たせてくれた。
自陣を振り返ると、浜野先輩が白恋の選手からボールを奪い、雷門は攻撃に切り替わっていた。
「でも……」
「大丈夫!」
天馬くんが私の両肩を掴み、無理やり白恋のゴールの方へ向けさせる。
私が視界の端で倉間先輩がパスを受け取っているのを捉えた瞬間、天馬くんが私の背中を押した。
倉間先輩の方を見ると、目が合った。
「A!」
鋭いパスを胸でトラップして受け取る。
倉間先輩や天馬くん、みんなが白恋のDFの動きを抑えてくれているので、私はフリーだ。私を邪魔するものは何もなかった。
これ以上ない、絶好のシュートチャンス。
砂の混じった風にミサンガが揺れる。
脚が勝手に動いて、ボールを勢いよく蹴り上げていた。
「Aちゃんなら、絶対飛べるよ!」
葵ちゃんの声に弾かれるようにして、私は右足で砂漠をえぐりながら飛び上がる。
気持ちだけではどうにもならない、じゃない。私はそもそも気持ちで負けている。
せっかく教えてもらったのに、如月さんがコーチとして指導してくれたのに、私はそれを無駄にするわけにはいかない。
みんなが信じてくれている私を、私も信じたい。
「絶対できる、絶対できる……!」
練習の時よりもずっと高い位置に、私はいた。
私の周りだけが太陽を無視して、冷たい夜が降りてくる。
無数の星々が瞬いているが、それは私の右足が青白い光を纏うにつれて見えなくなった。明るすぎる光の前には、恒星の光が見えなくなってしまうからだ。
「__すいせいシュート!!」
渾身の力を込めてボールを蹴る。
長い尾を引いたそれは、濃紺のキャンバスにすっと線がひかれるようにして白恋のゴールに伸びていった。
冷たい空気がフィールドを貫いて、相手キーパーの必殺技を破り、白恋のゴールネットに突き刺さる。
「ゴォーール!! A選手、初の必殺シュートで雷門一点を返しました!」
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春間(プロフ) - 桜星。さん» コメントありがとうございます! 助かります……! (2021年2月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
桜星。 - 4-3「怯え」の三行目、天馬のセリフが「次の試合こと」になっていますが、恐らく「次の試合のこと」ではないでしょうか。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 15148237ac (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - なすびさん» ありがとうございます! 楽しみにしてくださってとても嬉しいです。頑張ります!! (2020年8月26日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
なすび(プロフ) - 続編おめでとうございます!剣城くん抜きで試合がどうなるか楽しみです! (2020年8月26日 16時) (レス) id: c22c2e84dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春真 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2020年8月26日 12時