10-21.大きすぎる変化 ページ21
「実幡中追加点!! 得点は0対2ーー!!」
私は信じられない気持ちで電光掲示板を見上げた。何度瞬きをしても0対2。
こちらはこんなに呼吸が乱れているのに、相手選手はまだまだ余裕の笑みを浮かべている。
__これが本当に、あの実幡中なの?
すっきりとしない心持ちのまま、自身のポジションに戻った。昔のことに囚われすぎてはいけないとわかってはいるが、牙山という人の指導によって、こんなにも変わるものなのだろうか。
雷門中のみんなの表情に焦りが滲んでいた。決勝戦で二点先取されているのだから、それも仕方のないことかもしれない。だがそれ以上に、試合前のフィフスセクターについての話が、みんなに妙なプレッシャーを与えているのではないかと思う。
だって、「勝つ」ことと、「勝たなければならない」ことは全然別物だ。
全力でやるしかない。逃げ道なんて最初からない。私は自身の両頬を軽く叩いた。
「雷門のボールで試合再開です!」
ボールは私から天馬くんへ。ドリブルの得意な天馬くんや神童さんに、ゴール前までボールを運んでもらう作戦だった。
が、天馬くんのもとへ渡るはずだったボールは相手選手によってパスカットされた。
ボールを持ったのは実幡のミッドフィールダーだ。取り返そうと近づくと、相手選手はにやりと笑って化身を発動した。
「精鋭兵ポーン!」
さっき、別の選手が出していた化身とまったく同じだ。
ハッとしてフィールドを見渡すと、実幡のミッドフィールダー全員が、同じ化身を出していた。
「そんな、化身使いがこんなに……!?」
「“こんなに”? いいや、まだだよ」
相手選手はおかしそうに喉をくつくつと鳴らした。どうして、試合中なのに笑っていられるのか、理解ができない。
精鋭兵ポーンが、硬く握った拳を振りかざした。その度に衝撃波が生まれる。最後のひと押しと言わんばかりに、ポーンの拳が容赦なく襲いかかってきた。
「マシンガンビート!」
「わあぁっ!」
勢いで後ろに吹き飛ばされてしまう。地面は芝生だが、それでも派手に転がると肌が擦れて痛かった。
「決めろ」
相手選手が冷たく言い放った。パスを出した先にいた実幡のフォワードの背中から、ゆらりと青い影が現れた。
さっき、相手選手が笑っていた意味がわかった。
化身使いが“こんなに”いるんじゃない。
「まさか、全員が__」
天馬くんの声が震えていた。
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春間(プロフ) - 匿名2号さん» コメントありがとうございます! 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします! (2022年3月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名2号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます! 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります! (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました!この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…! (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます! お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2021年3月14日 19時