1-10.きっかけ ページ10
私は前にいた関西の中学校で、サッカー部のマネージャーを務めていた。田舎の小さな中学校で、部員もやっと11人揃う程度のいわゆる弱小チームだった。
そしてホーリーロード地区予選。第一回戦で私の学校は負けた。
私は落ち込んでいる選手たちに声をかけた。
今思えば、まったく配慮のない発言だった。
「次の大会はきっと勝てるよ! 次頑張ろう!」
がしゃんと大きな音がした。何が起こったかわからずその場に固まる。視界の端に使い古した学校のベンチが倒れているのが見えて、ああ今のはベンチを蹴り倒した音なんだなと妙に冷静だったのを覚えている。
「選手じゃないくせに、お前に何がわかるんだ」
.
「それから部員のみんなとギクシャクしちゃって、クラスの人たちとも……」
私の話を聞いて、葵ちゃんは「励ましたのに、その人ひどい!」と怒ってくれた。
「ううん、私がデリカシーなかったの。
私、誰とも話せなくなって……学校にも、行けなくて」
言葉に詰まる。抑えきれない嗚咽が洩れた。
円堂さんが立ち上がって部屋を出る。呆れられたのかとショックを受けていると、どこからかティッシュ箱を持って戻ってきた。差し出された箱から数枚抜き取り、礼を言う。
「それで、もうサッカーに関わらないほうがいいって思ったんだけど、でも、そんなの逃げてるだけだって……」
目元を拭って、松風くんを見る。彼はまっすぐな瞳でこちらを見てくれていた。
雷門中サッカー部に入ったからと言って、前の学校のサッカー部にいた私が上書きされるわけじゃないし、発言は取り消せない。
すごく自己満足で、自分勝手だ。
相変わらず最低な奴だ。だけど、
「私、サッカーとちゃんと向き合いたい」
サッカーが笑っているところが見たい。
松風くんは力強く頷いた。
「俺と一緒にサッカーやろう!」
差し出された右手を握ると、円堂さんが私と松風くんの肩にポンと手を置いた。
「じゃあ早速サッカーやるか!」
「え?」
「使ってないユニフォームがあるはずだから、着替えてからスタジアムに来てくれ」
「あの」
有無を言わさず、円堂さんはミーティングルームを出て行ってしまった。
「私、マネージャー希望のつもりなんだけど……」
松風くんは「何か考えがあるんだよ」と言ったけど、彼自身も困惑している様子だった。
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春間(プロフ) - 名無し40482号さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます! 励みになります。 (2020年10月7日 13時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し40482号(プロフ) - とても綺麗で読みやすい小説で、感動しました…( ; ; )更新楽しみにしてます。 (2020年10月6日 14時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - Ruiさん» ありがとうございます。申し訳ないのですが、占ツクの使い方がよくわかっていないので今回は遠慮させていただきます。コメントありがとうございました! (2020年8月9日 11時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
Rui - 初めましてタイトル凄くいい感じ!もしよかったら好きな作品出来るイベントもし参加出来たら嬉しいです勿論CSS付きも可能です。「 あなたの小説読ませて下さい。」です。 (2020年8月9日 0時) (レス) id: 79cb60a812 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - 充滞さん» ありがとう、頑張ります! (2020年8月7日 19時) (レス) id: e235827dac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2020年8月5日 11時