40. この世界線の前提 ページ3
「いつも京介と仲良くしてくれてありがとう」
「こちらこそ」
「あいつは正直に話さないところがあるだろう」
「はい。でも、それが京介らしいと思います」
ふふ、と笑って返答すると、優一さんは少し驚いたような顔をしてからまた柔和に微笑み返した。
「京介って…優一さんの前では甘えたりするんですか?」
「あんまりないかな。少なくとも、俺が今まで接してきた京介は」
"彼が今まで接してきた京介"というのは、おそらくこの世界にいる京介のことだろう。
「Aちゃんの知ってる京介や俺はどんな人物かな」
「京介は、常に優一さんのことを考えて、自分を犠牲にしてでも最善のことを選択する人です。優一さんは、京介がサッカーをすることを自分のことのように喜ぶ人です。…私はそう思っています」
「そうなんだ」
「素敵な兄弟です。本当に」
あの事故がなければ。あの悲劇がなければ。もっと彼らは幸せになっていたのだろうか。
…だが、現実的には、今の世界こそがその幸せの結果だ。これが事実だ。幸せになる筈なのに、幸せとは断言できないのは、京介がサッカーを辞めたからだろう。
「……一つ、君に言っておくことがある」
「はい」
「この世界線の京介はAちゃんに依存している」
私は言葉を失った。一瞬、彼の言葉を疑った。
「え…?」
「困惑するのも無理はないよ。詳しく聞くかい」
「は、はい。教えてください!」
優一さんは語った。
小学生の頃に京介と私は同じクラスになり、私から話しかけ、サッカーを通じて仲を深めた。兄の留学を機にサッカーから離れた京介は、心に空いた穴を埋めるため自然と私の存在を求めるようになった。優一さんが留学から帰った頃には、京介が家にいないことが多くなったらしく、私の家に入り浸ることも少なくなかったという。また、その時代の私と優一さんは面識があまりないらしく、頻繁に話す仲ではないという。
「そうなんですか…。」
「明日、京介に会いに行こうと思う。君も来る?」
「いえ。…私は陰から見ていようと思います」
「そっか」
この世界線の京介に会いに行ったとしても、ただ混乱させてしまうだけだ。それならば、イナクロのストーリーに沿うような形で静かに行動するのが吉だろう。
京介が私に依存、か。
今までだったら考えられなかったな。そんな別の世界線があるのか。
…依存……か。
120人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルナストーン(プロフ) - …っ!?(何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ!?) (2020年10月12日 0時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー!ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ([甘い戯れ]の後のやつの最後に向けてなのです)こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:充滞 | 作成日時:2020年10月10日 21時