JIYONG -2-

代役 -You- ページ6

「え！？私が…ですか…？」

「うん。モデルの子達が飛行機のトラブルで来れなくなっちゃって、でも、撮影は延期できないから…お願いできないかな？」

担当しているグループのファンミーティングがあって、来ていたシンガポール。

そこで新曲のMVを撮影するのだとは聞いていたけど。

ダンサーとして来ていたCRAZYのメンバーが、急遽そのモデルさん達の代わりを勤めることになり、その１人に私が選ばれた。

グループは5人いて、１人１人にCRAZYメンバーが付き、男女で各々の物語を演じるけど、繋がりはあって、それが１つのMVになるというもの。

ペアになるメンバーの男の子と私。
それからスタッフさん。

3人で流れを説明してもらい、軽くリハーサルもし、
ヘアメイクをする部屋に行くと、MVに出る他のCRAZY達がいた。

「A、キスシーンあるんでしょ？頑張ってね」

オンニがニヤニヤしながらそう言って。

「フリですよ！」

慌てて、必死になって言い返してしまった。

そう…キスシーンがある。
ジヨンさんのMV同様、カメラの角度で本当にしているように撮影してもらうんだけど…

「結構絡みもあるよね？」

絡み…なのか、あると言えばある。

「でもAより、アヨンのがすごいよね！だってベットシーンでしょ？」

え！？

「そんなんじゃないよ。ジャケット脱いで、迫るだけ！」

「さすがアヨン」

ケラケラと笑い合うみんな。

本当に…さすがアヨンちゃん。

キスシーン…
なんとなく、フリでも…ちょっと胸が痛くて。
わからないけど、もしかしたらジヨンさんに見られるのかな…って思うと…


「じゃあ、Aちゃんもメイクするから座ってね」

そう言われ椅子に座り、
恐る恐る…スマホの画面を見た。



だよね…やっぱり。
電話もメールも何もなし。

うん…そうだよね。



MVの話を聞いた時、
真っ先にジヨンさんのMV撮影のことを思い出した。

楽しかった。

それ後も、楽しい日が続いて、
本当に楽しかった。

最後の日から…もうすぐ1ヶ月がたつ。


ジヨンさんが私を必要としなくなるまで。
そう思って、
いつもこれが最後だと思って接してきたけど、
いざそうなってみれば…


あっさりと忘れることなんかできず、
前を向くこともできず…



ヘアメイクをしてもらい、撮影するクラブに来た。

人や場所の雰囲気。

ジヨンさんもこういう所に来るんだろうな、って思ってしまって。

なんでも関連づけてしまう自分が腹立たしくなった。

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