JIYONG -2-

怖い -Jiyong- ページ4

目を開けた瞬間、
何がどうなのかわからなかった。

けど、少し離れた所にAが見えて、
驚いて飛び起きた。

あ…そうだ。
え…俺、もしかしてあのまま？

抱きしめて、背中をさすられ、
ずっといるって言ってくれて…

休もうって言われ、その言葉のまま、
馬鹿正直に本当に寝てしまったんだ。

ちゃんと服は着てるし、
タオルケットが身体にかかってる。

頭の下にはクッションがあるし、
Aが…俺を寝かせてくれたんだよな？

ってか！

起き上がり、Aのそばに近づいて、
その場にしゃがみ込んだ。

何でこんな所で寝てるんだよ…
壁際のフローリングの上に寝てるA。

ラグも、クッションも、タオルケットもなく。

顔にかかった髪の毛をよけると、
無防備な寝顔が見えた。

不安になったり、安心したり。
でも今は…怖い。

つい、甘えてしまう。
受け止めてくれることを知ってるから。

よく考えてみれば、自分でも驚くほどのわかままや願望を、ごく自然にAには口にしてしまう。

あったこと、思ったこと。
その全てが、口から簡単に出てきてしまう。

会ってまだ、数ヶ月なのに。
何でAは、俺にとってこういう存在なんだろう。

そんな存在であるAを、もし失えば…
どうなるんだろう…

そんな風に先を考えれば怖いし、
これからも、唯一無二のようなAの存在が大きくなりそうで…
いや、なると思うし…

その時の自分を思うと、怖くてたまらない。

「よいしょっ…と…」

小さく呟いて、Aを抱き上げた。

一瞬躊躇はしたけど、
開いたドアの隙間から見える、
ベットがある寝室へ入った。

そして、ゆっくりとAをベットに下ろし、
かけてもらっていたタオルケットを持って来て、
そっと身体にかけた。

薄暗い明りの中、
ぼんやりと見える寝顔を見ていた。

不思議と、もしも許されるなら、
このままずっと見ていられそうな気になった。

また自然と伸びた手。

おでこにそっと触れ、Aが俺の背中にしてくれたように、優しくおでこを撫でた。


そして…


身体を屈め、近づいて…
そっと…

そっとおでこにキスをした。

唇が少しだけ触れる、そんなキスを。


名残惜しく立ち上がると、
振り返ることなく部屋を、家を後にした。

振り返れば出て行けなくなる。

それがわかっていたから。

けど、身体は離れても、
自分の中からAが消えることはなかった。

むしろ、身体が離れたぶん、
より強く、Aを求めるようになった。

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