JIYONG -2-

風邪 -Jiyong- ページ14

最悪。
よりにもよって、何でこんな日に風邪を引くのか。

寝たら楽になる。
そう信じて寝たのに、
起きたら余計にひどくなってたし。

頭がガンガンするし、
唾を飲み込むと喉が痛い。

けど、怠い身体を起こし、スマホに手を伸ばした。


数秒のコール音の後、聞こえてきたAの声。
少し身体が楽なった。

こんな体調だから仕方ない。

そう思っていたけど、
声を聞くと、話したくなって、
声を聞くと、会いたくなって。

なのにAは休めとか、寝ろしか言わないし、
早くに電話を切ろうとする。

「やっぱり…」

やっぱり…会いたい。

だって１ヶ月ぶりだし、約束してたし、
会いたい。



いつもAの家に行くと、俺にはコーヒーを。
Aは紅茶を。

最近、その紅茶から甘い香りがして、
何の香りなのか聞くと、マスカットの紅茶なのだと教えてくれた。

その紅茶に砂糖を入れて、ホットで飲んだり、アイスにしたり。

紅茶かコーヒーかと聞かれたら、迷うことなくコーヒーを選ぶ。

砂糖を入れるか入れないか聞かれても、迷うことなくなしを選ぶ。

だけど、どうしても飲んでみたくなった時があって、一口もらったことがある。

甘いけど、すっきりとした甘さで、
何より香りが良くて。

今日、朝からアレが飲みたいな…と珍しく思ってたのは…
朝から不調で、身体が糖分を欲してたからなのかな。


お見舞い…っていうか、
ただ、今日、約束通りに会いたいだけ。

一瞬考えたよ。
家ってどうなんだろう…って。

完全なるプライベートな空間だから、
ここには信頼できる家族しか、ほぼ入れない。

メンバーやマネージャーは数回あるけど、
それ以外の友達や、まさか女なんか入れない。

でもその点、Aは…

信頼があるから、今、ここまでの仲になったわけだし、何よりも…会いたいから。


「お願い、A」


頼めば、Aはきいてくれること。
知っている。

「でも…紅茶のお店、教えるので、ご家族の方やマネージャーさんに頼んだ方が…」

それじゃあ意味がないんだって。

「お願い。無理？」


すごく困ってるのが伝わってくる。
でも…会いたい。

「わかり…ました」


困らせた？
無理矢理だった？

ちょっとトーンが落ちた声で、
ロックの解除方法や番号を聞くA。


こんな重要なこと、他人に教えるなんて…
病みすぎ？
大丈夫？俺。


いや、違う。
絶対的な信頼があるから。

Aには。

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