Untitled -3-

対面 -Jiyong- ページ2

「あれ？もう煙草ない…」

朝から落ち着かない俺。
あっという間になくなる煙草。
Aと別れてから本数が本当に増えた。

いいや、別に。
誰も止めるやついないし。

落ち着かない理由は、
もうすぐキム・ジウォンがここに来るから。

一昨日着いたチェジュ島。
予定してたよりも早く、
過去最高の速さで終わったMV撮影。

本来なら今日の夜に打合せだったんだけど、
向こうも昼過ぎにはこっちに着くらしいから、
着き次第、打合せが行われることになった。


あー…、ダルい。
こんなこと考えるのがダルいけど、
どんな顔して会えばいいわけ？

正直会いたくないんだけど。
きっと向こうだってそうだろうし。

多分お互いAのこと意識するんだろうし。

もうすぐ1ヶ月たつけど…

『終わりにしよう』って言われて、
はいそうですかって簡単に忘れられたなら…

すぐに好きな女が他に出来て、
Aのことなんかどうでもよくなれたなら…

どんだけ楽なんだろうって思う。


だから。

正直、キム・ジウォンに会うのが辛い。

今どういう関係なのかは別にして、
俺が会いたくてたまらない人と毎日会って、
笑い声を聞いて、会話をして、姿を見て…

羨ましくてたまらない。

本当の所、キム・ジウォンが憎くてたまらない。



うわぁ、気持ち悪っ。
自分の身体の中が最悪な感情でドロドロになってる感じ。

最低。


『君が幸せであることを願う
そんなありふれた嘘さえつけなくて』

歌詞にそう書いたけど、
本当にそう。

今でもそんなこと、
俺には言えない。



「ジヨン」

ドアをノックする音とともに開いたドア。

「着いたって。行ける？」

「あぁ…うん」


なんでこんなに緊張するだよ。

煙草を灰皿に思いっきり押し付けて、
火を消した。


新しいシャツを羽織り、
いつもの香水を頭上に向けてひと吹き。
頭からふわっと香る香水。

こうしてお互いやり合って、
『ジヨンの香りがする』なんて…
嬉しそうに笑ったAを思い出した。

水のペットボトルを片手に部屋を出る。

打合せの部屋。

ドアをノックし中に入ると、
部屋の奥にいたNIKEの担当者とキム・ジウォン。



「初めまして。キム・ジウォンと申します」

深くお辞儀をし、
丁寧に差し出された右手。

「初めまして。クォン・ジヨンです」

握手をすると、
キム・ジウォンがにこりと笑った。


あの夜、俺の車を睨んだ奴と同一人物？
そう思ってしまうほどの好青年に驚いてしまった。

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