-0.TO.10-

ステージ -You- ページ20

1曲目が終わり、呼吸を整えながら温かい拍手を感じていた。

ホテルということもあって、お客さんは様々。

小さな子供もいれば、年配の方もいらっしゃる。
恋人同士、身体を寄せ合ってる方もいれば、
女の子数人のグループもいる。

見てくれた方に対してお辞儀をし、
次の曲の位置につこうとした時…

目線の先に見つけた1人の人。

サングラスをかけて、キャップを被り、
首にはパーカーのようなものをマフラーみたいに巻いて。
白いTシャツにハーフパンツ。


常夏のここハワイで、あの首元には違和感はあるものの、他は至って普通。
よく見る格好。

薄暗いし、サングラスをかけてるし、
だから断言なんかできないのに…

心臓が大きく音を立て出して、
身体がカタカタと震える感じ。

目線も、もうどこをどう見たらいいのかわからず、
変に泳いでしまって。


…と、曲が始まって、
そしたら一瞬で曲の中に入ることができ、
数分間だけは彼を忘れることができた。


曲が終わり、また温かな、より一層大きな拍手が鳴り出した。

各方面に向けてお辞儀をし、ステージを降りようした瞬間。

どうしても気になって、さっきの方向をチラッと見た。



夢じゃない。
見間違いでもない。
思い間違いでもない。

サングラスを外し、こちらを見ているその人は…
間違いなくジヨンくんだった。


どうして！？
なんで！？

いろいろな疑問が出てきて、
パニックになりそうなほど頭がグチャグチャになった。


もちろん振り向く勇気なんかなくて、
ステージを後にしたその背中に、
見えない目線…
というかさっきのジヨンくんを感じて、
恐怖というかなんなのか、
もう本当に説明のつかない感情から逃げ出したくてたまらなくなった。


「……っ！」


控え室に向かって小走りで走っていた瞬間、
突然右腕を掴まれて、その方向を見ると…

「テソッ…！」

「ごめんヌナ。何度も呼んだけど聞こえなかった？」

驚いた私に謝るテソン。

優しいその声の響きと、
昔から変わらない優しい眼差し。

堪えていた涙が溢れ出した。

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