-0.TO.10-

【過去】恐怖 -Jiyong- ページ17

本当は怖かった。
怖くてたまらなかった。

自分の中の一部だけ、本当にキレイに消えた記憶。
そんなことがあるなんて、できるなんて、
そしてまさか自分の身におこるなんて。

でも本当はそれだけじゃないんじゃかいか？って。
周りが気づいてないだけで、
消えた記憶は他にもあるんじゃないか…

いや、もしかしたら、わかってて俺に隠してる人もいるんじゃないか…

そう思い出すと誰も信じることができなくて、
本当に俺は俺なのかな？とか。
本当に俺はG-DRAGONであってるんだよな？とか。

考え出すと怖くて、恐怖で気が狂いそうになる。

だからやめた。

新曲も出て、それが好評で、人気も出た。
CMのオファーもあったし、
雑誌の撮影、バラエティーの出演。
コンサートの準備、次の新曲の準備。

ありがたいことに日々忙しくなって、
他のことを考える余裕なんてないほど。

みんなはそれに愚痴を溢すこともあったけど、
俺にはそれがありがたかった。

最初の1年位は、消えた記憶の彼女のことを聞かれることもあったけど、
2年、3年、4年……

時間が経つにつれ誰も聞かなくなった。
新しい恋もしたし、
根拠のない噂もたったし、
女関係だけじゃなく、
グループの良いニュース、悪いニュース…
もう常に、いろんな俺やグループの記事が出て、
遠い昔のようなあの記事の存在なんて、もう誰も忘れてる。

俺自身もそうだった。

だけど…年に…数回。
あっ…と、何かに反応して、彼女というか、
一部の記憶を失ってる自分を思い出すことがある。

それがなんなのか…
決まった『モノ』を見てとか、『出来事』とか、
それはわからない。

もしそれがわかれば、
もしかしたら記憶を思い出す手がかりになるのかもしれないけど、
今さら思い出した所で…という思いはある。

ただ食事をしてたり、
撮影をしてたり、
道を歩いていたり、
買い物をしてたり、
そんな特別ではない日常の中で急に思い出すもんだから、気分が良いとは言えない。

思い出した後は記憶がない、
他の人とは違う自分にため息がでるから。


一度、彼女の名前をネットで検索したことがある。

『パク・A』

検索すると出てきたのは過去のあの記事と、
それについての書き込み。

後は当時所属してた事務所の名前と…
もうその事務所は潰れたという記事。

後は…何もない。

彼女は今どうしてるのか。

知る由もないんだから、
もう思い出さず、永遠に消えてくれたらいいのに…
そう思っていた。

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