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紫side
「濱ちゃんは淳太に告白するん?」
不安そうにこちらを伺いながら聞いてくる望に間髪入れずに返す。
「せえへんよ」
すると驚いたように目を見開いた。
「な…んで…?」
俺はそんな望に対して笑いかける。
「好きやから」
「…ぇ…」
「好きやからせえへんねん」
好きだからこそ笑っていて欲しい。困らせたくないのだ。
「そんなん…辛くないん?」
俺よりも辛そうな顔をしてこちらを覗き込んでくる望。そんなんさ。
「辛いに決まっとるやん」
俺だって思う。しげよりもずっと前から好きなんは俺なんになとか。俺なら淳太のこと悲しませたりせぇへんのになとか。
「やけど」
淳太にとったら辛い想いも苦しい心臓もしげならいいんだと思う。
「しげやないとあかんのや」
「なにが?」
「俺の大好きな淳太の笑顔をすぐに引き出せるんはしげちゃんだけやからな」
最終的に誰の隣にいようとあの笑顔が消えないのなら俺は幸せだ。
「そっか…」
まだ不安げに項垂れる望の頭に手を乗せる。
「でもこれは俺の考えやから」
「…へ?」
「望は好きな方選びや?」
俺の選んだ道が正解かなんて分からないんだから。
「どっち選んだって応援するで」
俺の予想外の答えに狼狽えている時点で道は決まっているのだろうに。
すると望は少し悩んだ素振りを見せてから口を開いた。
「バレとったん?」
「これでも人生経験は望よりも豊富やからなぁ」
そうおちゃらけて見せると望は「はは」と軽く笑ってからまた俯いた。
「やけど…淳太もしげも悲しませてまうかもしれんで?」
「ええよ。別に俺淳太のこと諦めた訳やないから」
今は告白しないだけで奪えるなら奪う。ずるいって?分かっとるよ。
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作者名:年長さん | 作成日時:2023年3月25日 1時