検索窓
今日:5 hit、昨日:12 hit、合計:221,515 hit

三十話 ページ33

家に戻った瞬間、私を縛っていた何かから解放された。

扉にもたれ掛かった儘、ずるずるとずり落ちる。



─────────又、やってしまった。



男は死んではいないだろう。
でも、殺しに近い事をした。



先刻まで私を縛っていたモノは一体何なのか。
何で私は躊躇なくあの男にあんなことを出来たのか。


考えなければいけないことは山ほどあるのに、頭が上手く回らない。




もう嫌だ。
あの男にも、大切な人はいたかもしれない。
恋人や妻はいなさそうだったが、友人はいたかもしれない。
あの男の両親も、若しかしたら生きているかもしれないのに。



もう、誰かの大切な人は殺したくない。



────────でも。




昔ポートマフィアを抜ける時、紅葉の姐さんに云われた言葉が蘇る。




〔人は、生きていく為には手段を選んで居られない時もあるのじゃよ。誰かの幸せの為に、自分を殺す必要等無い。人間誰だって、自分が一番大事なのじゃから。それが普通なのじゃから。〕



手段を、選んでいられない。


私は、如何やって生きていけばいいんだろう。



───────我々と一緒に来ないかい?



脳裏によぎったのは、林太郎さんの言葉。


その時、携帯に着信があった。




『………………タイミング良すぎでしょ。』




林太郎さんからだ。




『もしもし。』

【もしもし、Aくん? 体の調子は如何かね?】

『お陰様で、良好です。』



体だけなら。




【そうか、良かったよ。中原くんから話は聞いている。矢張り、この時が来てしまった、と思っていたがね………】

『…………はあ。』




林太郎さんの言い回しに少しイラッとする。
恐らく、林太郎さんは私にポートマフィアに入って欲しいんだ。

「人殺しちゃったんだし、もういっそポートマフィア入っちゃえば?」とでも云いたいのだろう。



『林太郎さん。他に何か用事でもお有りですか?』

【うん、そうだね………無い訳では無いんだ。君も分かっていると思っていたけど………】

『ポートマフィアに入れ、と?』

【流石だ。】



電話の向こうで、林太郎さんが笑っているのが分かる。
あの胡散臭い、貼り付けたような笑みで。



【一つの手だよ。ポートマフィアに入れば、人を殺しても「仕事だから」と理由を付けてしまえる。】

『人を殺して、私にデメリットが無くなったこのタイミングを狙ったんですね。』

【否定はしないよ。】



善い返事を待ってる、と云って電話は切れた。

三十一話→←二十九話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (384 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
768人がお気に入り
設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , シスコン   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

桃茶(プロフ) - 詞音さん» ありがとうございます!夜中の3時…!?ちゃんと睡眠も取ってくださいね!w (2018年4月9日 7時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
詞音 - 面白かったです!ついつい夜中の3時後まで読んでしまいましたw 他のも見ときます! お疲れ様でした。(´∀`) (2018年4月9日 3時) (レス) id: 6b5092fe94 (このIDを非表示/違反報告)
桃茶(プロフ) - 御免なさい、三十二話とあとがきが何故か消されていて……形的にはこれで終わりです!閲覧ありがとうございました! (2018年4月3日 13時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
悠爽 - 終わるんですか!?とても良い作品だったのに!でも作者さんお疲れ様でした。とても素敵な作品で面白かったです!!! (2018年4月3日 13時) (レス) id: e139e0903a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - え・・・終わっちゃうの!?・・・・・おもしろかったです!! (2018年4月3日 12時) (レス) id: da69d52ea0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:桃茶 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年10月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。