伍肆 桜の花言葉 ページ7
「離してくだせェ!俺は酒に生き、酒に死ぬのが待ってもんでさァ」
「いつか土方さんのようになりますよ?」
夜になると毎日のように酒を酌み交わす隊士共。
呑むんだとさっきからこの調子で。病院じゃ一滴も飲めないので余計だろう。
でも駄目なものは駄目だ。まだ入院中であるのを忘れてはならない。
「酒に酔わなきゃ俺ァ祝うこともできないんでィ」
え…そんなことない。絶対。
「じゃあ酔ってなくて良かった。じゃないと一緒に夜桜見れなかったですから。まだ咲いてないですけど」
総悟さんが隣にいてくれて嬉しい。そう言いたかったけど恥ずかしくてそんなこと言えない。
精一杯の遠回しな言葉。
本当は桜より彼の横顔を見つめているが。
「桜の花言葉って知ってますか?」
「知りやせんね」
「なら、気が向いたら調べてみてください。
それが私の今の気持ちです」
「気が向いたら…ねィ」
そこから私達は何も話さなくなった。
彼は何かを考えているようで。私も同じ。
でも…先に声を出したのは私。
「総悟さん。これもらってくれますか?
籠手くれたの時からずっと渡そうと思ってて…」
ずっと渡そうと思ってタイミングが掴めなかった、プレゼント。
「開けていいですかィ?」
「もちろんです………私もネックレスなんですけど…」
何をプレゼントしたらいいか分からなくて、どうせあげるなら喜んでほしいから。
結局選んだのは
緑色のネックレス。
店員さんが話してくれて。
昔はネックレスをプレゼントすることには無事を祈る、幸せを願うそんな意味があるんだと。
そしてもう一つ意味がある。
「お前の目と同じ海藻色ですねィ」
「何ですかその呼び方!?Greenです、Green!!」
どうか離れないように。
「誕生日おめでとう」
目は合わないが囁くように言われた言葉。
すごく嬉しくて。
悲しくないのに心が痛くなって。
私はいつまでここに、この世界にいられるかな。
夢を見た。
全て忘れてしまう、そんな夢。
私の幼い頃の記憶のように。
「ってわけで俺と勝負しやせんか?」
どういうわけだ?
「おー!受けて立ちましょうとも!!」
「内容も聞かず後で泣いても知りませんぜ?内容は」
“「逃げたら負け。それだけでさァ」”
逃げたら負け?
意味は知らんが私も漢だ!しかも内容が内容だからやめたら逃げるってことで負けになる。
「あー総悟さんの泣き顔楽しみだな!あはは」
女は根性だよね。うん。
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作者名:千の歌を歌う人 | 作成日時:2019年9月8日 1時