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夢を見るんだ。
幸せな夢だ。
隣に君が立っていて笑っている。
檸檬のような君が笑顔を振り撒く度に色褪せた世界に鮮やかな火花が散る。
君が真剣に絵を描くのを見ながら横で本を読み、眠くなったら寝て好きな時に愛を確かめ合う夢だ。
君はいつも何処か儚げですぐに夏空に溶けてしまいそうだった。
君が一人で立っていられない時は後ろで支えてあげる。
だから僕が一歩踏み出す勇気がない時には手を引いてほしい。
そんな夢だ。
「_ここか」
メモを何回も確認し、そして病室の扉を開けた。
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鮮やかな火花が散る。
蝶が鱗粉をキラキラと撒き散らしながら舞う。
嗚呼なんて事だと危うくブーケを落としかけた。
そして全てを悟った。
ジョジョ、君にはどれだけ感謝しても足りないだろう。
ゆっくりベットへ近付く。
視界が霞み出す。
夢を見るんだ。
もう一度君に会う夢だ。
こんな突然叶うだなんて人生何があるか本当にわからないな。
あの日から成長が止まった君の髪をすくい上げキスをした。
伏せられた睫毛は相変わらず長く緩やかなカーブ。
顔の横に手を置き、そして少しだけ塩っぱいキスを唇に落とした。
同時に涙が数滴彼女の頬に滴り落ちた。
君の見開かれた目が僕を真っ直ぐ貫く。
見つけたら絶対文句を言ってやると決めていたのに言葉が嗚咽に変わる。
夢は現実に変わる。
世界が色を取り戻す。
クピドとプシュケって知っているか。
最後にクピドのキスでプシュケが冥界の眠りから覚める神話だ。
クピドはプシュケを探し回り、そして見つけ出すんだ。
「...フーゴ?」
「パニーだ」
祖母がそう呼んでいたっけかと懐かしい愛称を教える。
「パニー、どうして...」
「どれだけ探したと思っている...っ!
馬鹿、この...っ」
言葉が掠れ涙に変わる。
君が作った未来だ。責任を取ってくれるよな。
震える手で指輪を取り出す。
嗚呼なんて情けないプロポーズだろう。
「A、結婚してくれ」
指輪とブーケをはんば押し付けるように渡す。
彼女の双眼が大きく見開かれ、絵の具のような大粒の涙が重力に従い落ちた。
「私こんな人だけどいいの?」
「Aだからいいんだ」
「あなたを幸せにできない」
「何を言っているんだ」
この長い間どれだけ不幸だったと思っている。
「君がいれば幸せなんだ。
もう一度言う、返事を聞かせてくれ」
__僕と、結婚してくれますか?
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鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼ&チェリーさん» そんなッ!あなたがッ!!大好きですッ!!!(告白)ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです! (2019年8月25日 16時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー - もう!本当に!!どうしてこんなに素敵なお話が書けるんですか!?好きです!(テンション) (2019年8月25日 9時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼさん» 読んでいただきありがとうございます!是非ごゆっくりしていってください! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - 暇を持て余した夢女さん» とっても素敵な表現ありがとうございます...!こちらこそ幸せです!また機会がございましたらその時はよろしくお願いします! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 次から次へと呼んでしまいます。気づいたら1時間ぐらい経ってました。 (2019年8月22日 15時) (レス) id: 5e7806b95a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年8月4日 19時