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正直僕の運転の方が良かったのではと思うくらい荒い運転だった。
だがそれくらいの非常事態なのだということを同時に実感した。
ミスタからしてみれば彼女のスタンドを解く方法を知れるかもしれないという気持ちもあるだろう。
けど僕はただ彼女の無事を祈るばかり。
彼女の可憐な笑を思い出す。
巻き込みたくなかった。
ただ誰かと幸せになって欲しかった。
「ここだっ!止めてくれ!」
「嗚呼」
路駐をしマンションの階段を駆け上がる。
3階の角部屋、ヒュウガと書かれた表札。
以前僕がしたことを思い出す。
非常事態だ、わかっている。
だがインターホンを押そうとする手が震えてたまらない。
僕はどんな顔をしていればいい?
そう思いが駆ける刹那突然横からにゅっと伸びた手がインターホンを押した。
「ミスタっ」
「何があったか知らねぇけどよぉ、今はそれどころじゃあねぇだろ!」
ごもっともだ。
唇を噛み視線を上げる。
中の反応はない。
「今日は何曜日ですか?」
「今日は日曜日だぜ」
彼女とカフェテリアで会っていたのは土曜日。
日曜日は大体の店が閉まっている。
なので家に居る確率は高い、いや居るに決まっている。
嫌な汗が出る。
思わずドアノブに手をかけた。
____鍵が開いていた。
ミスタが拳銃を構える。
そっと扉を押し隙間から二人で入った。
冷房で冷えたフローリングの上を足音を建てないようにして歩く。
真っ先にアトリエの部屋へ向かった。
ドアが半開きだ。
そっと扉を押した。
一年ぶりに訪れた色鮮やかな部屋。
「____...は?」
嗚呼と心が悲痛な叫びをあげた。
散乱した絵の具に、黄金の箱。
爪の間には洗いきれなかった色とりどりの絵の具。
休憩中だったのだろう、床に落ちたケーキは以前彼女が食べたいと言っていた店のものだった。
それが無惨にも床でべチャリと潰れクリームは溶けていた。
僕は自分の気持ちに気付かないふりをしてきた。
あの日再会してどれほど嬉しかったか。
彼女の存在が心に居た。励みだった。なのに、
この状況は何なんだ。
何故彼女が床に倒れている。
何故目を覚まさないんだ。
ぐらりと吐き気を覚える。
「おい、フーゴ...」
「...___の、せいだ」
「は?」
耳を塞ぎたかった。
今にも血が煮えたぎりそうだった。
僕が君を吹っ切れなかったから、不甲斐なかったから起きた。
巻き込んだ
____僕のせいだ。
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鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼ&チェリーさん» そんなッ!あなたがッ!!大好きですッ!!!(告白)ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです! (2019年8月25日 16時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー - もう!本当に!!どうしてこんなに素敵なお話が書けるんですか!?好きです!(テンション) (2019年8月25日 9時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼさん» 読んでいただきありがとうございます!是非ごゆっくりしていってください! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - 暇を持て余した夢女さん» とっても素敵な表現ありがとうございます...!こちらこそ幸せです!また機会がございましたらその時はよろしくお願いします! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 次から次へと呼んでしまいます。気づいたら1時間ぐらい経ってました。 (2019年8月22日 15時) (レス) id: 5e7806b95a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年8月4日 19時