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今日の夏の日差しは空から突き刺す様に暑い。
何もこんな時間に出るべきではなかったと内心舌打ちをした。
太陽が僕らを見下ろしながら熱を垂れ流すこの季節、海の表面では眩しく光が踊り狂う時間帯。
僕は目的の本屋へ早足で向かっていた。
そして到着次第画集のコーナーへ直行する。
以前テレビで特集を見て以来、丁度宗教絵画に興味があった僕は手頃なものを探しに来た。
ああここだと画集がある本棚を覗く。
...そこには必死に飛び跳ねながら上段の方の本を取ろうと奮闘する女性がいた。
「ん、ん〜っ!もぅっ!なんで台がないのこの本屋さん!なんでこんな本棚が高いの!?」
顔立ちから見て東洋の人間だろうか、まだ幼く見える。
中国、いや日本人か?
あちらの方の顔は幼く見えるから...きっと僕と同い年くらいだろう。
はんばキレながらそう愚痴る彼女にどの本を取りたいのだと尋ねた。
「あれ、あのシックな赤色の本です」
「ああ少し待ってください」
僕も少し背伸び気味にその本を手に取る。
表紙には「ルーブル美術館特集」と書かれ、皆様お馴染みのモナ・リザが微笑んでいた。
「どうぞ、これですよね?」
「グラッツェ!助かりましたー!」
ふぃーっと大袈裟に汗を拭う動作をして笑う彼女に一瞬ドキマギする。
あっ!そうだと彼女が笑って飛び跳ねる度美しい絹のようなストレートの黒髪が揺れ、清楚な檸檬を連想させる香が舞った。
「お礼に何か美味しいもの食べませんか?奢りますっ!」
「...そうですね、ではお言葉に甘えてジェラートとか」
「いいですね!私まだこっちに来たばかりでイタリアのジェラート食べてみたかったんですよ!」
その前に何かまだ見ますか?と小首をかしげる彼女の爪の間には鮮やかな色がこびり付いていた。
「ええ...あの、絵描きですか?」
「ん?ああそうです!私、日向Aと申します!画家目指してます!」
「パンナコッタ・フーゴと申します、いつかまたご縁があれば絵を見せてください」
その後は僕も本を買いジェラートを食べてではまたいつか会えたら〜と別れた。
が、次の日
「え、あ」
「あっ」
カフェテリアで早速再会した。
彼女の手にはスケッチブックと妙な削り方をした鉛筆が握られていた。
暗黙の了解と言った具合に僕達は相席となった。
これが僕らの出会いだった。
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鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼ&チェリーさん» そんなッ!あなたがッ!!大好きですッ!!!(告白)ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです! (2019年8月25日 16時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー - もう!本当に!!どうしてこんなに素敵なお話が書けるんですか!?好きです!(テンション) (2019年8月25日 9時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼさん» 読んでいただきありがとうございます!是非ごゆっくりしていってください! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - 暇を持て余した夢女さん» とっても素敵な表現ありがとうございます...!こちらこそ幸せです!また機会がございましたらその時はよろしくお願いします! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 次から次へと呼んでしまいます。気づいたら1時間ぐらい経ってました。 (2019年8月22日 15時) (レス) id: 5e7806b95a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年8月4日 19時