6 目覚め ページ6
あなたSide 続き
その日から私は、何もできなくなった。
正確には、部屋から出られなくなったと言うべきなのかもしれない。
いつもの癖で机に向かっている自分に気づいては苦しくなり、ベッドに倒れ込む毎日が始まった。
父さんも母さんも最初はかんかんに怒ってたっけ。
でも、私が返事をしないから強行に部屋に入ってきたから、丁度ベッドに座っていたのを上手く利用して廃人化していた。
そうしたら、諦めて部屋から出て行った。
それきり、部屋の前に食事を置いてくれる以外は一切関わっていない。
これで、良かったんだ。
そして今に至る。
顔も名前も知らない赤の他人の言葉で、私は目覚めたんだ。
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顔を上げたAの目には、ついさっきまで消えていた光が灯っていた。
「・・・小説家になりたい」
初めて将来なりたいものが決まった瞬間だった。
「小説家になって、もっとたくさんの人に感動してもらいたい。もっと、もっと、もっと・・・!」
Aの小さくもはっきりとした声が、無機質だった部屋にこだまする。
Aは立ち上がり、窓まで歩いて行って閉まっていたカーテンを勢いよく開いた。
真っ暗だった部屋に、白い光が差し込んでくる。
目を細めたAは呟いた。
「空って蒼いんだな。初めて”色”を見たかもしれない」
そうして、窓をゆっくりと開き、外の空気を吸い込んだ。
「これから私は、AじゃなくてAとして生きるんだ」
小説家Aが、今ここに誕生した。
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リアナ-璃亜那-(プロフ) - レミードールさん» ありがとうございます!違和感のある文章等ありましたら遠慮なく言ってくださいね! (2021年9月21日 15時) (レス) id: 6afe7efa1d (このIDを非表示/違反報告)
レミードール - とっっっってもおもしろいです! (2021年9月21日 15時) (レス) id: 2c7b3635e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リアナ-璃亜那- | 作成日時:2021年7月24日 12時