立候補 ページ14
その日俺は、女子たちと一緒に生徒会役員に立候補した生徒たちが載った名簿を見ていた。
「今回は生徒会長に立候補したの、狐弾だけなんだね」
「ね〜!狐弾なら絶対当選するって!私たちがいるからさ」
普通選挙は、複数人が役割をかけて対決するものだ。
しかし今回は、生徒会長に限っては立候補したのが俺だけだったため”信任投票”となった。
「でもその分、書記の立候補は多いよね〜」
そのとおりだ。
上の方の立候補が少なかった分、書記の立候補者数はかなりのものになっている。
ざっと書記立候補者に目を通していたとき、俺の目はは一つの名前に釘付けになった。
”沢村A”
彼女の名字は知らなかったが、恐らくこの子があの日会った子だろうと、俺は直感で思った。
「ねえ、皆」
この子にも良ければ票入れてくれないかな?
そんな言葉が出そうになるのを、俺は咄嗟に抑えた。
もしこのことを彼女が知ったら悲しむはずだ。
他者の力で当選するのと自分の実力で落選すること、きっとAさんは後者を選ぶだろう。
「・・・どうしたの狐弾?」
俺が女子たちに声をかけてそのまま黙り込んだのを見て、女子の一人が俺に尋ねる。
「いやちょっと、言い方を迷ってさ。他の生徒会役員は、俺との相性だとかそういうのは一切考えずに投票してほしいなと思って」
なんとか誤魔化しつつ、俺は唾を飲み込む。
どうかAさんが無事に当選しますように。
俺の願いは叶った。Aさんは当選した。
でも、あの日のことを言う気にはなれなかった。
もし彼女が覚えていなければ、気まずいだけだからだ。
そして俺は、完全な初対面を装った。
これが、俺がAさんを”気にかけている”理由。
───────狐弾Side 終わり───────
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夕和(プロフ) - sogu508さん» ちょっとそのコメントやめてwwwめっちゃ笑ったwwwww (2022年11月29日 20時) (レス) id: 40c359dc38 (このIDを非表示/違反報告)
sogu508(プロフ) - どうも狐弾先輩です。読者の皆さん俺の彼女がお世話になっています。不思議な気持ちですが毎回楽しみです。 (2022年11月29日 20時) (レス) @page15 id: 4549537148 (このIDを非表示/違反報告)
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