彼女の正体が何であれ【鬼滅の刃】【遊郭編】

苦悩 ページ38

できることならば、この戦いには始まってほしくなかった。


私は善逸くんのことが大好きなんだから、善逸くんの味方をしたい。現に今もそうしている。


だけど、蕨姫のことも大好きなのだ。


この戦いでは、何方かが必ず命を落とさなければならない。


それが何方だったとしても、私には辛すぎる。


A『・・・っ・・・ううっ・・・』


口から嗚咽が漏れ、私は足元を見つめた。


私はどうしたらいいの？


一緒に怪我人を運んでいた男性が心配そうに私を見た。


「おい大丈夫か？怪我でもしたのか？」


A『・・・そうじゃない・・・だから大丈夫です』


口では大丈夫などと言っておきながら、私の目からは涙が大量に流れ出ていた。


「大丈夫じゃないだろう。休んでいなさい」


本当は、彼の優しさに甘えても良かったのだろう。


でも、私にそんなことはできなかった。


A『本当に大丈夫なんです。私なんかよりも、怪我人の手当を優先しましょう』


男性は納得していないようだったが、私の言葉を尊重してくれた。







遊郭の中心街では、激しい攻防が繰り広げられているようだった。


離れたこの場所からでも、爆音がはっきりと聞こえる。


善逸くん、どうか無事でいて。


そして、また一緒に遊びに行こうよ。


私は、戦場と化した遊郭にいるであろう善逸くんの無事を祈った。

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