【03】 ページ42
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8月。
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それは葉月の8月であり
俺の誕生日である8月であり
パティスリーAugustの8月でもある。
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俺たちの結婚式をするなら8月にしよう、と何度も葉月と夢を語ったことを今でも覚えている。
だから。
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菜月「………」
潤「どうだった？葉月」
菜月「………」
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今日という晴れ舞台を、8月にしたんだ。
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私が先にお姉ちゃん見るから！入ってくんなよ！
そんな相変わらずの罵詈雑言を俺に吐いて、先に葉月がメイクアップしている部屋に入っていった菜月を待って
しばらくして出てきたかと思えば、グズグズと何も言わず泣いてる菜月。
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ネイビーの大人っぽいドレス。
高校生の頃みたいに髪の毛を切って、肩につくぐらいの長さ。
淡いピンクのバレッタをつけてる姿は、やっぱり綺麗で素敵な女性にしか見えない。
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潤「菜月？」
菜月「…おねーちゃん」
潤「ん？」
菜月「あんたにはもったいない」
潤「うん。もったないよ」
菜月「そういうとこ！そうやってクソみたいに優しくて！クソみたいなとこ！」
潤「褒めてんのか貶してんのかどっちかにしてくれ」
菜月「……っ…ありがとう……」
潤「…」
菜月「お姉ちゃんと結婚してくれてありがとう」
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類は友を呼ぶとよく言ったものだ。
菜月を見ていると、時たま高校生の頃のAの姿がチラつく。
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不器用で、泣き虫で、子供っぽくて。だけどその子供っぽさが誰かを助けてることを自分では気づいていない。
ーーーー…あぁ、そういうところ。
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潤「菜月」
菜月「ーーーー…ぅっく」
潤「ありがとう」
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お前の、一番好きなとこだよ。
ほら。
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菜月「…っ、メイク崩れた！直してくるから！さっさと見てくれば！？」
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素直じゃないところは、二宮譲りだろう？
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コンコン。重厚な扉を叩けば、扉の奥から「はい」という高い声。
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潤「入るよ」
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ギィ………と軋む扉。
窓の外は晴れ。
空気は、恐ろしいほどの白。
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潤「………世界一綺麗だ」
葉月「…(笑)、菜月と同じこと言うのね」
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俺の花嫁は、見とれてしまうほど美しかった。
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