【09】 ページ36
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昨日も今日も。時間になっても出てこないから。ぶっ倒れてんじゃねえかと思って。
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「あの…」
和也「いーから。病人は寝てなさい」
「……すみません。料理出来たんですね」
和也「これでもあなたよりは長く生きてますからね。一人暮らしだし？おかゆぐらいは作れますよ」
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得意げに笑って、私の家のキッチンに立ってる二宮さん。
…少し不思議だ。いつもベランダの壁の向こう側にいた人が、今はこうして私の部屋にいるなんて。
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もぞもぞと布団にくるまって、その様子をぼんやりと眺めながら思う。
何よ。自分だって一晩、ベランダに出てこなかったくせに。
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和也「熱は？下がった？」
「…だいぶよくなりました。お薬が効いたみたいです」
和也「そう」
「こっちのお薬は副作用がないみたいで」
和也「ん？」
「いや、なんでもないです」
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できた、と声がしてふらふらと起き上がると既に二宮さんが隣に来ていてその手には
なかなか美味しそうなおかゆ。
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和也「ほれ、食え」
「……ありがとうございます」
和也「あーんする？」
「しっ、しなくていいです！」
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くっくっくっ、と意地悪な笑い方。
二宮さんはその場にあぐらをかいて、なんの躊躇いもなく辺りをキョロキョロ。
…ちょっとかわいい。
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「おいしい、です」
和也「そりゃよかった」
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熱のせいだ。
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私は基本、石橋を叩いて叩いて叩いて
これでもかってぐらい叩いてから渡るタイプなのに。
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「…彼女さんいるのに、私なんかに構っていいんですか」
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何を血迷って、こんなど直球。
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二宮さんは目を大きく見開いて、それから
ふっと三日月のような目。
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…ああ、グレーじゃない。
そうか。
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和也「やっぱり見られてたか」
「……え」
和也「別れたよ。」
「………？」
和也「つーか、もう終わってたんだよね」
「……」
和也「ずっと、前に終わってた」
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グレーに見えたのは、夜景を帯びていた瞳だったからなのか。
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