【09】 ページ26
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がたんごとん、と揺れる鉄の塊。
窓の外をぼんやりと眺めながら
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ユウキ「あ！つぶぐみのおにーちゃん！」
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さっきとは逆方向に向かって行く。
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智「ありゃ。ゆーきくん、帰り？」
ユウキ「おばーちゃんのお家のかえり！」
智「ママは？」
ユウキ「まま、奥のトイレ！」
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自分で開けなきゃ乗り降りできないぐらいの、古いローカル線。
ガタガタと揺れてしまう電車の感覚。この感覚はもうきっと
…もうきっと、感じることはないだろうと目を閉じて腕を組む。
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ユウキ「おにーちゃん」
智「……」
ユウキ「おにーちゃん、どこか痛いの？」
智「…ん？なんで？」
ユウキ「おにーちゃん、泣いてるから、どこか痛いのかなあって」
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がたん、と大きく揺れた衝撃で
ぽろん、と生温かいものが手のひらに落ちる。
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智「……だいじょーぶ、いたくねぇぞ？」
ユウキ「いたいのいたいのとんでけー！する？」
智「あは、してくれるの？」
ユウキ「してあげる！」
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いたいのいたいのとんでけー！ってやってくれるユウキくんの頭をぽん、と撫でて
ああ、彼女の頭もよく撫でたなと思い出す。
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大丈夫、もう。大丈夫。
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ユウキ「…あれ？おにーちゃんちがう」
智「何が？」
ユウキ「あさ、つけてたゆびわとちがうの、つけてる！」
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子供は目敏いと聞くけど、どうやらそれは本当らしい。
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智「よく気づいたね。そうだよ、違うよ」
ユウキ「これはなあに？」
智「これは、俺の奥さんとお揃い」
ユウキ「じゃあ、あさつけてたあれは？」
智「あれはーーーー……」
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ーーーー…『大野さん、またね！』
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智「可愛い、女の子にプレゼントしてきたよ」
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チヨ「…あらあら。Aちゃん、あなた随分綺麗に飾られたのねぇ」
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チヨ「両手に指輪なんて、素敵なこと」
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『Silver』fin.
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