【04】 ページ21
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智『え？A、風邪引いてるんですか？』
チヨ『そうなんよ、昨日からね、少し弱っててねぇ。ウチで寝てるわい』
智『大丈夫なんですか？昨日、台風来てたから雨でぬれてとかですか』
チヨ『そうだろうねぇ、大丈夫、お前さんが来るって昨日は喜んでたのにねぇ』
智『お見舞い行ってもいいですか？』
チヨ『そうしてくれ、Aちゃんも喜ぶよ』
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この町に来るようになって、四年。
それでも一年に片手で数えれるぐらいしか来れないから、そんなに数は多くない。
もうすっかり切符でやって来る癖がついて、切符入れにそれを入れるたびにちょっと苦笑い。
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だけど、今日はちょっと違った。
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智『Aちゃん』
『…あ、大野さん』
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すっかり馴染みのあるチヨさんの家に入ると、そこには顔を青白くして寝込んでいるAちゃんの姿。
ちょっと、こっちまで心が痛む。
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智『風邪だって？大丈夫？』
『大丈夫です。ちょっと腕が痛いぐらい』
智『関節痛か。痛むよなぁ。あ、起きなくていいよ。寝て』
『…、せっかく大野さんが来てくれたのに』
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むっすう、という効果音がまるでぴったり。
その表情を見たら、もうダメだった。
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智『Aちゃん。こんな時にごめん』
『…？』
智『弱ったとこに突くみたいでヒキョーなんだけど』
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今日は違うんだ。
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智『結婚を前提に、俺とお付き合いしてくれませんか』
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パカ、とシルバーのリング。それはまだ婚約指輪でもなんでもない。
ただの指輪。でも、お揃いの指輪。俺の指に片方は光ってる。
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今日は違った。最初からAちゃんに告白をしようと思って口から飛び出そうな心臓を必死に飲み込んで電車に揺られて来た。
今だって。
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死んじゃうんじゃねぇか？ってぐらい、ドキドキしてる。
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『……大野さん』
智『うん』
『嬉しいです』
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こほ、と咳をしたAちゃん。
青白い顔をしたAちゃん。
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『でも……ごめんなさい。私、あなたとお付き合いできません』
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自惚れていた自分を、引っ叩きたかった。
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