鶴は幸せを運ぶのか Ⅰ (ページ30)

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『…アレ？』
「Aさん」
『須藤サン。どうかしましたか？』

先程出ていったばかりの、須藤サンが立っていた。彼はこちらに気付くと片手を上げる。

「一昨日、次に会った時に食事でも、と言ったものですから。ご都合が合わなければ、断って頂いて結構ですよ」
『そうですね…。午後…三時頃から、取材がありまして。それまででしたら是非』
「分かりました」

どうやら律儀に待っていてくれたらしい。時間を確認すれば、11時過ぎ。時間は充分あるだろう。

行きたい場所を問われたのでどこでも良いと答えれば、須藤サンの行きつけの店に案内してくれるそうだ。

案内されるままに、須藤サンの車に乗り込む。病院まではバイクで来たのだが、また回収しに来ればいいだろう。

シートベルトを締めると、緩やかに車が動き出した。

ーーーーー

「そういえば…Aさんは被害者の桃井さんと同じ職場だそうですが」
『えぇ、自慢の先輩ですよ』
「そうですか…。では、貴方も、あの行方不明事件を追っているんですか？」
『アー…いや。行方不明事件は令子サンが担当なので』
「……。…そう、ですか」
『何か？』
「いえ。こんな職業ですから…行方不明事件とやらには少し興味がありまして」
『あぁ、成程。何か話せることがあれば連絡しますよ。その前に記事にしちゃうかもですけど』
「それは、我々も負けては居られませんね…」