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「ご馳走様」
『ご馳走様でした』
昼食を食べ終え、編集長の食器も受け取り片付ける。
仕事場に戻れば、入れ替わるように島田サンが椅子から立ち上がった。手には食べ終わったうどんの食器。
「真司君…スタッフ紹介のページ、どうする…？」
そういえば島田サン、真司に、スタッフ紹介のページを作り直すから、辞めるなら早く言うように言ってたな。
本人に直球で言うあたり、なかなか惨いことをする。
『島田サン、私やりますよ』
「いいの？」
島田サンの食器をついでに受け取って、来た道を戻る。給湯室で食器を洗っていれば、後ろから真司の声が聞こえた。
「編集長！…俺も、取材行ってきます」
「おう」
扉が雑に開かれる音がして、洗い物そのままに顔を覗かせる。
すると、仕事場を出てきたばかりの真司と目が合った。
「Aちゃん、」
『…行ってらっしゃい、真司』
「行ってきます！」
真司を見送ってから、島田サンの食器の片付けをして、ついでにコーヒーを入れた。それを持って、二人の待つ仕事場に戻る。
『コーヒー飲む人ー』
「はぁい」
「はーい」
案の定手を挙げた二人にコーヒーを渡して、自分も一口飲む。
足元には、散らばった書類たち。
仕方ない。今日は気分がいいから、床に散らばったリストの整理くらいはしてやろうか。
落ちているリストに目を通し、順番通りに並べていく。そこには被害者の名前や性別、情報提供者との関係性が書かれていた。
そこにひとつ、見知った名前。
ー高見士郎ー
『…兄さん…？』
何で、兄さんの名前が、
ーキン、
目を見開いていれば、脳裏に響いた硝子のぶつかる音。
昨日のソレとは違い、その音は完全だった。
今度こそ、ライダーが増えたらしい。
この気配は、ドラグレッターと契約したものだ。モンスターの中でも上位の能力を持つ、真っ赤な龍のモンスター。
契約したライダーの名前は、仮面ライダー龍騎。
何故か、そういうライダーに関する情報のようなものは、まるで魂に刻まれたかのようにスラスラと出てくるのだ。
だから、ライダーとしての情報は、一通り知っている。コレも"平等"であるための制度か何かなのだろうか。
兄さんに出会うには、全てのライダーが揃って、ライダーバトルが終わらなければいけない。
でも、頼むから、ライダーバトルなんてしないで欲しい。
一概に喜びとも悲しみとも言えない、不完全な感情が、ドッと押し寄せた。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
