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「何？どういうこと？」
「だって…こんなに次から次に人が消えるなんて…普通じゃないでしょ、危険ですよ！ヤバいですって！」
「…」
『真司、』
「ほら、令子サンなら、危険なことしなくても他にいくらでもスクープをものにできるでしょ」
令子サンが不機嫌になったのが分かる。真司め、地雷踏み抜きやがったな。
確かに、真司の言うことはもっともだ。私だって、原因を知っているし、ミラーモンスターが人を襲うことも知っている。危険だからやめて欲しいと思ったことはあった。
それでも止めないのは、令子サンの取材へ対する情熱を知っているからだ。彼女はそれを軽視されるのを酷く嫌う。
「データを読ませていたのは、無駄だったみたいね」
「…え？」
「スクープをものにする？冗談じゃないわ。私が真実を追っているのは、心の底からそれを知りたいと思う人がいるからよ！」
令子サンは、デスクの横のコピー機から出てきた紙を真司に見せつける。そこにはこの連続行方不明事件の被害者の名前が書き連ねてあった。
「このリストの何を見てたの？これはただの文字の羅列じゃないのよ！親、兄弟、子供！人一人消えたことで、どれだけ影響あると思ってんの。そんな根本も見ないで、事件だのジャーナリストに憧れてるだの騒いで。挙句の果てに危険だからやめろ？子供の遊びじゃないのよ！危険が怖いならこんな仕事さっさと辞めちまえこのバカ！」
「……」
令子サンは一気に捲し立て、被害者のリストを真司に押し付けて取材に向かった。
ヒュウと口笛を吹きそうなのを抑えて、呆然とする真司に近付く。
「……」
『真司。ホント、朝からどうした？らしくない』
「Aちゃん…」
トン、と手の甲で真司の肩を小突けば、彼は気まずそうにこちらを見詰めた。
そして、同じくやってくる編集長。島田サンは無心でうどんを啜っている。
「ま、令子がキレるのもしょうがないか。アイツ内心な、お前のなんにでも突っ込んでくとこだけは認めてたんだよ」
「え…」
「突っ込む方向は、かなり間違ってるけどな」
『え、ずるい。私にはなんか言ってなかったんですか？』
「お前のことは散々ほめてたよ。度胸あるし頭の回転は早いしってな」
『やだぁ嬉しい』
右頬に手を当てて大袈裟に喜べば、バカかと編集長にデコピンされた。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
