ＯＮＬＹ［HS］ (ページ43)

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我に帰ったのは4階の心療内科での診察を待っている時。
最後に覚えているのはお皿が崩れてくる光景で、なぜ自分が今診察室にいるのかも、車椅子に乗りながらホソクオッパの手を握っているのかも、わからなかった。

「オッパ？」

HS「ん？」

「ここでなにしてるんですか？」

HS「何って…これからここで診察してもらうんだよ」

「ここ…って？」

HS「外科の先生に紹介してもらった心療内科……もしかしてA、覚えてない？」

MN「A、最後に覚えていることは？」

「私お皿落として…あのお皿って、やっぱり割れちゃいましたよね…？」

HS「そこから…」

MN「A、お前はお皿を足に落として破片が刺さってるのを見つけたホソギが僕を呼んで病院で診てもらったんだ。足見てごらん」

言われるままに足を見ると、包帯が巻かれている右足。

「こんなにひどい傷なんですか？」

HS「そんなにひどくないよ。数針縫っただけ。しばらくは安静にしてなきゃいけないけど、そんなに長引く怪我じゃないって、先生も言ってた」

「そうですか…」

HS「A、本当に何も覚えてない？」

「…はい。何かありました？」

何もないよっていつもの笑顔で返ってくると思ったのに、うーんと口をつぐむオッパ。
どうしたんですか、って声をかけようとしたところで看護師さんが、もうすぐ先生来ますよ、と声をかけに来た。

HS「じゃあ、」

オッパが立ち上がり、手が離れた瞬間、心にぶわっと風が吹いたような感じがした。

「あっ…」

思わず手を伸ばしてしまう私。
なぜこんなに不安になっているのか、分からなかった。
オッパはそんな私の様子を見て、もう一度私の手を取った。

HS「大丈夫、どこにも行かないから」

その手はすごく安心する手で、さっきまでの急な動悸が収まっていく。
オッパはもう一度私の手をしっかり握りなおした。