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龍を呼び出す為には完璧に六根を清め、精神を統一させる必要がある。蕨美家に伝わる式神の中でも位が高く、その分強さも並以上の『龍』。
水中を独壇場とし、そこだと最大限に力を発揮できるのだが、地上や空中でもその凄まじいパワーとスピードに変わりはない。龍はAを護るように宙を舞うと、咆哮を上げながら花御に食らいついた。
((気配が変わって………………！))
噛み付いた腕には大きな傷跡が残り、再生にも時間がかかっているようだ。これならやれるかもしれない。少しの希望が見えて、Aの瞳に再び光が宿る。
そこへ、
『……………そのナマクラでは私は斬れませんよ』
｢！｣
腕からボトボトと体液を流す花御の背後、振り上げられた刀が、その腕に振り下ろされた。
｢真希！｣
見覚えのあるその刀は三輪のもの。
真希のことだ。三輪とやりあった時にパクってきたのだろう。所謂『太刀取り』というやつだ。
心強い仲間の登場に、Aも伏黒も少しばかり顔色を明るくする。
｢畳み掛けますよ、先輩！｣
伏黒が構えた刀で花御に斬りかかる。硬い身体に傷ひとつ付けられなかった真希の(正しくは三輪の)刀とは違い、その切っ先は花御の目から生えた樹を斬り落とした。
『こちらの刀は悪くない』
落とされた樹と腕を完全に修復した花御の口調は相変わらず穏やかだ。Aはゴクリと唾を飲み、仕込み杖に手をかける。その一方で、伏黒は自身の影から何かを取り出していた。
｢もっといいのがあるぜ。
……………………これを使うのは胸糞悪ィけどな｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
