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｢──────『ぶっとべ』！｣
｢！｣
最後の力を振り絞り、掠れた声で棘が叫ぶ。
すると花御の身体は勢いよく後方へ弾き飛ばされ、その反動で喉から血を吹き出す棘はとうとう意識を手放した。
｢どうしようどうしよう、棘も加茂さんもやられた……これもう無理やろ、ほんま死ぬって…………｣
Aはぐったりとして動かない棘を受け止めると、高校生男児にしては小柄なその身体をぎゅうっと抱きしめた。とめどなく溢れる涙を引っ込めることはできなくて、ただ只管に声をあげて泣いた。すると、そんなAの肩を、誰かが叩く。
｢ふしぐろくん…………？｣
｢先輩は優しすぎます｣
｢え｣
｢さっさと祓えばいいのに、怖くて足が竦んでも、無意識のうちに自分の力に制限かけてんじゃないですか｣
｢そんなことっ…………！｣
そんな事ない、とは言いきれなかった。
伏黒が言いたいことを簡潔にまとめると、“Aはあの呪霊に手加減している”という事だ。
馬鹿げたことを。
あんな呪い相手にかける情なんかない。
……………………でも、Aは自信を持ってそう言えなかった。生まれつき持つこの強すぎる能力のお陰で閉じ込められ、箱入り娘として育て上げられた。まともに力を使ったことのない幼少時代を経て、日に日に強くなるその能力を使いこなせるようになるのに苦労した。それでも、｢下手こいて暴走したらどうしよう｣ ｢これやっぱり痛いんやろなぁ｣ ｢人死んだらどうしよう｣とか、無意識のうちに色々考えてしまっていたのだと、そう気づいた。
(あ、そっか。)
｢お前はもう少し本気でやれ｣。
真希にそう言われたのを思い出す。そんなこと言われたっていきなり本気なんか出ないし、まずそもそも本気の出し方が分からなかった。
けど、今なら
｢ありがとう伏黒くん。私、なんかやれそうやわ｣
“本気”で戦うことが、できそうな気がしたのだ。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
