夜明けのいばら道�� ページ36
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思わずぎゅっと目を閉じたAの前で、バキンと鈍い音がする。野薔薇を括りつけていた椅子が鶴瓶に直撃したんだろうと思い、そっと目を開けるが、そこには恐るべし光景が広がっていた。
｢チッ｣
野薔薇の忌々しげな舌打ち。
地面には、バラバラに砕けた椅子が落ちていた。
鶴瓶と野薔薇の間に小泉が飛び込んだのだ。その巨体によって打ち砕けた椅子が彼の恐ろしさを物語っており、背筋がぞわっと冷たくなるのを感じた。体格差のせいで逆に床に転がる形になり、砕けた椅子が邪魔で上手く立ち上がれない野薔薇は、無様にも横になったまま藻掻く羽目になってしまう。
｢ダメだよ釘崎ちゃん。小泉はフィジカルだけは一流だからね。複雑な術式はダメダメだけど、筋肉と、呪力による皮膚硬化の術式。盾としちゃ一級品だ｣
｢じゃあテメェの頭を先にカチ割ってやるよ｣
｢おお怖いね。でもそれ、絶対無理｣
君らは俺に勝てないよ、という、鶴瓶のその言葉に抵抗の意思が萎んでいくのを感じる。彼らをどうにかしてやろうという気持ちも、勝てるという自信も、嘘のように溶けて消えるその感覚に、Aは確信したように言った。
｢…野薔薇ちゃん、無理に抵抗せん方がええ｣
｢？｣
恐怖という感情だけが溢れ出て、今すぐにでも泣き出してしまいそうなのを堪えたAは、鶴瓶の方に視線を向ける。返ってくる余裕そうな笑顔にまたぞわりと寒気が駆け上がり、目を逸らしてしまいそうになる。それでも、このままやられっぱなしという訳にもいかない。
｢──────あんた、呪言師やろ｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
