夜明けのいばら道�� ページ28
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｢ふふ、これ帰ったら鞄につける｣
｢いーじゃんいーじゃん、伏黒たちに思いっきり自慢してやろーっと｣
真希さんのお土産も買う？なんて話をしながら雑踏の中をふらふらと歩く。上京したての頃はこの人集りが苦手で苦手で仕方なかったAだが、時を重ねるにつれ、その気持ちは段々と薄くなっていた。両親がAを大切に想うばっかりに、ずっと閉じ込められて生きてきた。そんなひとりぼっちのAにとって、こんなに人が集まる場所は窮屈でしかないのだ。……だけど、光の灯らない世界で泣いてばかりのAを引っ張り出してくれた真希や、仲良くしてくれる仲間たちと一緒なら、こんなのちっとも怖くない。寧ろこの騒がしい東京の街を好きだと思えるほどだった。
｢あ、そういえば｣
｢？｣
渋谷ヒカリエ方面に向けてのんびりと歩いていたAの足を、野薔薇がぽつりと呟いた声が止めた。
どうしたん？と振り向くと、｢この前先輩たちと話してたんだけどね｣と野薔薇は口を開く。
｢狗巻先輩って、どんな人なの？｣
｢棘？｣
｢うん。悪い人じゃないのは分かってるんだけど……
だってほら、語彙がおにぎりの具しかないんじゃ会話のしようがないし。なんか掴めないのよね。｣
｢あー……｣
時は夏頃まで遡る。姉妹校交流会に向けての特訓の際に、パンダと真希にも同じことを聞いていた野薔薇。面倒見がよくて根は明るい奴で悪ノリが好きで……なんて言われたもののいまいちピンと来なかった野薔薇に、｢そういうことは私らよりAに聞くのが手っ取り早いんじゃないか？｣と真希に言われたのだ。
｢どんなって言われても……見たまんまやと思うよ？｣
｢見てわかんないから聞いてるの。彼女のA先輩なら、誰も知らない狗巻先輩の一面とか知ってるんじゃないかなあって思って｣
｢誰も知らないって………………｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
